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宣教師ザビエルの夢 50

 アプリで読む光言社書籍シリーズとして「宣教師ザビエルの夢」を毎週月曜日配信(予定)でお届けします。
 1549年8月15日、鹿児島に一人の男が上陸した。家族や故郷を捨て、海を渡った男が、日本で夢見たものは何か。現代日本に対する彼のメッセージを著者が代弁する!(一部、編集部が加筆・修正)

白石喜宣・著

(光言社・刊『宣教師ザビエルの夢-ユダヤ・キリスト教の伝統と日本-』〈1999429日初版発行〉より)

第四章 ユダヤ・キリスト教の真髄

三、「あなたの父と母を敬え」

家庭を支える二つの軸
 世界の諸宗教が共通して教えてきたことの一つは「家庭の理想」です。そしてそこで表現される理想の家庭の構造を眺めると、家庭には二つの軸があることが分かるのです。『世界経典』を編纂(へんさん)したアンドリュー・ウィルソン博士は、次のようにまとめています。

 「家庭には縦軸と横軸がある。一つは、祖父母から父母、そして子女へとつながる縦軸であり、もう一つは夫と妻、兄弟姉妹といった横軸である」

 十戒に刻まれた「あなたの父と母を敬え。これは、あなたの神、主が賜わる地で、あなたが長く生きるためである」との言葉も、まさに家庭を支える二つの軸を指し示すものといえます。

 子供にとって父母を敬うことは、また祖父母を敬うことでもあり、先祖を敬うことにつながります。さらに両親は、将来結婚したときの、夫婦の理想の姿を示すものとなります。そういう意味で、この戒めは縦軸と横軸両方の意味を含み、家庭の理想を指し示しているといえるのでしょう。

 ところで、十戒を全体的に見ると、それは二つの部分から成ります。神と人との関係にかかわる戒めと、人間相互の関係にかかわる戒めの部分です。偶像を拝まず、神の名をみだりに呼ばず、ただ唯一の神を拝せよとは、神への愛の掟(おきて)に関するもので、第一の部分に属します。それに続いて述べられるのが、「父と母を敬え」というこの戒めです。ここからは人間相互の関係、いわゆる人倫道徳といったものが述べられています。しかし「父と母を敬え」の戒めを、単純に第二の部分に入れるのではなく、縦軸と横軸の二つの部分をつなぐ「橋」だと見る見方があります。

 それは何を意味しているかというと、まず第一に、律法に記された教えは、ただ平面的な人間関係の在り方を説いているのではない、ということです。まず神と人との関係を第一として、次に人と人との適切な関係があるということです。これもまた、別の意味で、縦軸と横軸といえるかもしれません。いずれの場合も、縦軸があり、続いて横軸があるものです。

 こうして見ると、十戒の二つの部分をつなぐ「橋」としての「父と母を敬え」は、家庭を支える二つの軸の交差点にあって、一方で第三の究極的な縦軸、すなわち神への愛を志向するものとなっています。

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 次回は、「生きた戒め」をお届けします。


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