2024.07.09 17:00
シリーズ・「宗教」を読み解く 324
修道院の祈り㉒
教会博士、トマスとボナヴェントゥラ
ナビゲーター:石丸 志信
ドミニコ会士トマスとフランシスコ会士ボナヴェントゥラとは、同時期にパリ大学の神学教授としてしのぎを削り、13世紀のキリスト教世界に双子星のごとききらめきを放っていた。
托鉢(たくはつ)修道会が生み出した二人は、「信仰と理性の実り豊かな対話を行いながら、啓示されたもろもろの神秘を探究しました」(教皇ベネディクト16世『中世の神学者』288ページ)と前教皇ベネディクトは評している。
カトリック教会では、この二人には、聖人の位の中でも、優れた学識と聖なる人格の模範を示した者として特別に「教会博士」の称号が与えられている。
トマスとボナヴェントゥラは、等しく神の啓示の神秘を探究するにおいても、それぞれの流儀で進めていく。
トマスは、イスラムを経由して中世ヨーロッパに新たに導入されたアリストテレス哲学を原文から研究し、これを神学の基礎として利用した。
一方、ボナヴェントゥラは古代キリスト教の大成者アウグスティヌスの伝統を相続し、プラトン的思考を採用している。
13世紀、神学の最盛期を迎えた二人の神学者は、共に神学を純粋な理論、思弁的学問としては捉えておらず、理論的と実践的両面を併せ持つ学問だと見ている。
トマスにとって、「神学は、ますます深く神を知ることを求める理論的学問であると同時に、わたしたちの生活を善へと方向づけることを追求する実践的学問」(教皇ベネディクト16世『中世の神学者』290ページ)であるという。
まず神を知り、次に神に従う行動が出てくる。どちらかと言えば認識を優位に置く傾向がある。
一方、ボナヴェントゥラは、認識を優位に置く理論的学問か、行動を優位に置く実践的学問かの二者択一を越えた知恵ある態度を持って統合的理解を示した。
ボナヴェントゥラが総長としてフランシスコ会を導く責任を担った時は、会の内部には、フランシスコの行動を文字どおりまねて神学を否定する人たちの声が強くなり、分裂の危険をはらんでいた。
総長ボナヴェントゥラは、会をまとめるためにも、統合的な神学観を示す必要があったのだ。
彼は、信仰は知性のうちにあり、情意を動かす性質のもので、「キリストがわれわれのために死んだという認識は認識にとどまらず、必ず情意、すなわち愛となるのである」(須藤和夫訳『命題集註解』〈教皇ベネディクト16世『中世の神学者』291ページ参照〉)と言う。
ボナヴェントゥラは、「愛するかたをよりいっそうよく知りたいと望むことが神学の根本目的」(教皇ベネディクト16世『中世の神学者』292ページ)とした。
人間の究極目的である完全な幸福に関して、トマスは「神を見ること」だと言い、ボナヴェントゥラは「神を愛すること」「神の愛とわたしたちの愛が出会い、一致すること」だと言った。
二つの托鉢修道会の伝統が生み出した個性の違う二人の神学者は、それぞれの創始者の姿を継承し、個性豊かな二つの流れを創り出していく。
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