2024.06.23 22:00
ダーウィニズムを超えて 64
アプリで読む光言社書籍シリーズとして「ダーウィニズムを超えて」を毎週日曜日配信(予定)でお届けします。
生物学にとどまらず、社会問題、政治問題などさまざまな分野に大きな影響を与えてきた進化論。現代の自然科学も、神の創造や目的論を排除することによって混迷を深めています。
そんな科学時代に新しい神観を提示し、科学の統一を目指します。
統一思想研究院 小山田秀生・監修/大谷明史・著
第六章 歴史から見た宗教・哲学と科学の関係
(一)歴史的考案
(5)ルネサンス時代から17世紀にかけて
コペルニクス(Copernicus, 1473~1542)の提唱した地動説は大変革をもたらしたが、神を中心とした宇宙観が、神を排除した宇宙観に変わったわけではなかった。彼は宇宙を創造主の目的に従って造られたものと見ていたのである。ガリレイ(Galileo Galilei, 1564~1642)はコペルニクス説の立場から重大な天文学上の発見をして、コペルニクス体系を広めた。彼らはキリスト教の権威によって排斥されたが、彼らの目的は神を否定することではなく、かえって神の創造の業をより正確にとらえようとするものであった。
ニュートン(Newton, 1642~1727)は力学を樹立し、天体の運動を力学によって根拠づけた。彼は宇宙を巨大な機械としてとらえたが、この機械を動かすために最初の一撃を加え、またその運行を調整するのが神であると考えた。ニュートンにおいて、神は宇宙の唯一の支配者であった。彼は次のように記している。
神は永遠に存在し、あらゆる場所に現在し、いついかなる所にも実在するものであり、時間と空間とを構成するものである。……神は、形なきもの、愛、知恵であり、無限の空間内の普遍的存在であり、その感能はすべての物事をくまなく見わけ、完全に知り、しかもそれらは、彼自身の中の存在であるがゆえに、あますところなく理解する(*3)。
17世紀には、神が造られた自然の姿を明らかにすることによって、神の栄光を高めるという信念が科学者の信条となっており、そのような立場から科学はめざましい発展を遂げたのである。
(6)18世紀~19世紀
ニュートンの形而上学的な機械論から神を退けたのがフランスの機械的唯物論であった。機械論は、初めは不変的、固定的な世界観であったが、人間の進歩を目指すフランスの啓蒙(けいもう)主義者たちは、その機械論的世界観に進歩の観念を植えつけた。
啓蒙主義者の進歩の観念は、ラプラス(Laplace, 1749~1827)による太陽系の進化説(星雲説)とラマルク(Lamarck, 1744~1829)による生物進化論を生み出した。そして生物進化論はダーウィンの自然選択説によって確立されることになり、宗教(創造論)に対する科学の勝利とされて、唯物論哲学の理論的な支柱となった。しかし、このような無神論的な世界観に基づいて、この時代に科学が発展したのではなかった。
科学の発展を支えたのは、むしろ有神論的な世界観であった。例えばデンマークのエルステッド(Oersted, 1777~1851)は電気と磁気の関係を研究し、電流が磁針を動かすことから、その結びつきを正確に証明した。彼は、すべての自然現象は一つの根源的な力の現れであるというドイツ自然哲学の影響を強く受けていた。すなわち、メイスン著『科学の歴史』によれば、「自然の発展の背後にはただ一つの力、すなわち世界精神の力があるだけであるから、光も、電気も、磁気も、化学親和力も、すべて相互連関をもつものであり、すべての現象は、それらの異なった相の現れ(*4)」であったのである。
またマイヤー(Mayer, 1814~78)やヘルムホルツ(Hermholtz, 1821~94)によって「エネルギー保存の原理」が立てられたが、そこには形而上学的な「基層に横たわる不滅の力」、すなわち「すべての自然現象の基低にある唯一の破壊できない力」というドイツ自然哲学の観念があったのである。つまり科学者たちは哲学を指針として研究を進めたのである。
(7)20世紀
20世紀に至り、科学は飛躍的な発展を遂げた。その結果、分子レベル、原子レベルでの物質の運動や機構が解明されて、物理学も化学も生物学も互いの境界線がなくなり、統一された一つの科学像を形成しつつある。またアインシュタイン(Albert Einstein, 1879~1955)の相対性理論はニュートン力学による宇宙観を根本的に揺り動かすものとなった。客観的に存在する絶対的空間や絶対的時間は否定されるようになり、時間と空間は分離して扱うべきものではなく、統一的に把握すべきものであることが示された。またアインシュタインとド・ブロイ(de Broglie, 1892~1987)により、光も含めてすべての粒子は波動性と粒子性を統一的にもつことが明らかにされた。20世紀の科学は統一された自然観によって導かれてきたのである。アインシュタインが「神がどういう原理に基づいてこの世界を創造されたかを知りたい」と語ったように、その統一的な自然観の背後には、唯一の実体である神のもとでの自然法則という信念があったのである。
*3 スティーヴン・メイソン、矢島祐利訳『科学の歴史』岩波書店、1975年、下巻、616頁。
*4 同上、下巻、539頁。
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次回は、「科学と宗教・哲学の関係はいかなるものか」をお届けします。