https://www.kogensha.jp/shop/detail.php?id=4229

シリーズ・「宗教」を読み解く 321
修道院の祈り⑲
神学は「聖なる教え」

ナビゲーター:石丸 志信

 トマス・アクィナスはドミニコ会士としての修練期間、パリ大学とケルン大学で哲学、神学の研究に没頭した。

 その間に、神学の教師で同じドミニコ会士のアルベルトゥス・マグヌスにその才能を見いだされ、27歳にしてパリ大学神学部の教師となった。
 最初の講義は「聖書の勧めとその区分」という主題だった。

 冒頭、旧約聖書(続編)のバルク書の一節「これは神のもろもろの戒めの書にして、かつ永遠に存する法であり、これを保つ者は皆生命に至る」バルク41)を引きながら、聖書の権威の効力、聖書の真理の永遠性、聖書の利益の広大性について解説していった。

 彼の神学的な営みは、あくまでも神のみ言である聖書の真理を理解し、それを語り教え、人々をキリスト者にふさわしい生活へと導くためのものだった。

 4年後に神学部教授に就任した時も、「聖書の勧め」と題する短い講演を行っている。

 「あなたはその高殿からもろもろの山に水を注がれる。地はあなたのみわざの実をもって満たされる」(詩篇10413

 この聖書の例えは、「神の知恵は、神自らの高みから、山々によって表象される教導者の精神に注がれ、そして教導者の役務を通じて、聴聞者の精神にまで神の知恵の光がもたらされる」ことを示すものだと説く。

 彼の研究活動は、「説教者兄弟会」の修道士らしく、神から頂いたみ言に隠された深遠な教えを解き明かし、人々が理性的にも納得し得る形で宣(の)べ伝えようとする営みだった。

トマス・アクィナス『神学大全』

 それをそのごとく実践し続け、およそ20年間に、神学に関する総合的・体系的な論文、討論集、聖書注解書、アリストテレスやその他の哲学書の注解、論争書など、膨大な著作を生み出していった。

 その中で最も有名なのが、神学の入門として著した『神学大全』だ。
 彼があえてこれを入門書というのは、イエス・キリストによって啓示された真理の深遠なる内容を理解していくために探究する、主題とその順序を体系づけたものだからだ。

 その主題の第一は神について、第二には神のかたどりである人間とその営みについて、そして最後に神へと向かうための道としてのキリストについてとなっている。

 神学とは「神についての学、また、神の被造世界への関わり方についての学」といわれる。

 トマスは、神について、神と人間との関係について、ただ理性的に探究することでは完全な知に至ることはできないと知っていたが、理性的な探究は神の啓示内容を理解するための備えをするものと捉えていた。

 それ故、トマスは「神学」を、「神の啓示を受け入れるところから出発する学」という意味で、「聖なる教え」と呼んだ。



★おすすめ関連動画★

ザ・インタビュー 第22回
【石丸志信・世界平和宗教連合会長に聞く(その1)「超宗教運動の30年を振り返って」】

U-ONE TVアプリで視聴する


ザ・インタビュー 第23回
【石丸志信・世界平和宗教連合会長に聞く(その2)「宗教者の対話を促進する『超宗教フォーラム』」】

U-ONE TVアプリで視聴する


ザ・インタビュー 第24回
【石丸志信・世界平和宗教連合会長に聞く(その3)「宗教者の役割と祈りの重要性」】

U-ONE TVアプリで視聴する


ザ・インタビュー 第25回
【石丸志信・世界平和宗教連合会長に聞く(その4)「超宗教平和運動への召命」】

U-ONE TVアプリで視聴する

---

 U-ONE TVの動画を見るにはU-ONE TVアプリが必要です!
 無料ですので、ぜひダウンロードしてご活用ください。

ダウンロードはコチラから

Android

iOS

ダウンロード方法について

▲画像をタッチすると視聴できます