2024.06.11 17:00
シリーズ・「宗教」を読み解く 320
修道院の祈り⑱
修道制の歴史が生んだ偉大な神学者、トマス・アクィナス
ナビゲーター:石丸 志信
中世の最盛期に登場した二人の托鉢(たくはつ)修道士は、西方修道制の父・聖ベネディクトの伝統を超えて、イエス・キリストの福音そのものに生活規範を再発見した。
徹底した福音の順守、わけても清貧に徹する生活が、人々に驚きと感動をもたらし、富貴に流れていたキリスト教会に新たな風を吹き込んだ。
田園の共住生活から巡回説教者となって、人々を訪ね、街々を経巡り、都市生活者のただ中に立って、彼らの理解しやすい言葉で語りかけた。
創始者・グスマンの聖ドミニクスとアッシジの聖フランシスコ、それぞれの個性を生かし、二つの托鉢修道会は互いに競合し補完しながら、文化形成の大きな潮流となっていく。
大学を舞台に、第2世代にはドミニコ会の聖トマス・アクィナスとフランシスコ会の聖ボナヴェントゥラ、二人の代表的な神学者を輩出することになる。
1225年頃、南イタリアの貴族の家庭に生まれたトマス・アクィナスは、幼い頃にベネディクト会のモンテ・カッシノ修道院で初等教育を受け、修道生活の基本を学び、勤勉な態度を身に付けていく。
1239年の秋にナポリ大学人文学部に進学し、文法学、修辞学、論理学、自然学を修める。
そこでイスラム圏を経て西欧世界に持ち込まれたアリストテレス哲学と出合う。
後に彼はアリストテレス哲学を用いた神学の体系化に力を注ぐことになる。
またトマスは、説教者には高度の学問研究が不可欠とした新しい運動に魅力を感じ、ドミニコ会への入会を決意した。
ところがトマスの家族はこれに猛烈に反対している。
伝統のあるベネディクト会ではなく、まだ社会的地位の確定していない托鉢修道会を選んだからだ。清貧に徹する生き方は到底貴族にふさわしくないと思ったのだろう。
家族は、暴力的にトマスを連れ戻し、1年間城内に監禁して彼の決心をくじこうとした。
決心を翻す様子が見えないトマスの部屋に、美しく着飾った女を送り、誘惑させて堕落させようとまでしたという逸話が残っている。
しかしこうした試練を乗り越えて、トマス・アクィナスはドミニコ会士となった。彼が20歳の頃だった。
中世最盛期の偉大な神学者と称されるトマス・アクィナスだが、彼は一介の修道士であり、福音に忠実に生きようと祈りを重ねてきた修道制の歴史が生み出した人物であることを忘れてはならない。
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