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ダーウィニズムを超えて 62

 アプリで読む光言社書籍シリーズとして「ダーウィニズムを超えて」を毎週日曜日配信(予定)でお届けします。
 生物学にとどまらず、社会問題、政治問題などさまざまな分野に大きな影響を与えてきた進化論。現代の自然科学も、神の創造や目的論を排除することによって混迷を深めています。
 そんな科学時代に新しい神観を提示し、科学の統一を目指します。

統一思想研究院 小山田秀生・監修/大谷明史・著

(光言社・刊『ダーウィニズムを超えて科学の統一をめざして』〈2018520日初版発行〉より)

五章 心と脳に関する新しい見解

(六)新しい精神療法への道

(3)新たなる道
 統一思想の立場から精神療法と生理学的治療法を見るとき、精神療法は性相的側面に重きを置いた立場であり、生理学的療法は形状面に重きを置いた立場である。性相面と形状面はそれぞれ互いに補い合う立場にあるというのが統一思想の見解である。そのような統一思想の立場を四位基台で表示すれば図56のようになる。ブラウン大学の医学部准教授ピーター・クレイマー(Peter Kramer)は「いずれは現在の精神療法と精神薬理学の療法を包含したものが精神療法と呼ばれるようになるだろう(*71)」と言っているが、まさにそれは統一思想の示す方向と一致している。

 精神療法と生理学的治療法は性相と形状の関係にあるので、精神的療法が主体的、原因的であり、生理学的治療法は対象的であり結果的である。したがって、生理学的治療法によって一時的に解決したとしても、原因が除去されないかぎり、やがては疾病は再発していくことになるのである。ゆえに主体的、原因的な心理的治療が必要となるのである。しかし誤ったフロイトの精神分析ではなくて、正しい精神分析、正しい心理的な治療がなされなくてはならない。

 フロイトは初め、神経症の原因を幼児期における性的虐待によるものと見て、性的外傷説を唱えた。しかし、必ずしもそうでないことを悟り、のちに、幼児にも性欲があり、それは年代とともに変化していくという幼児性欲説を主張するようになった。そしてフロイトは、人間の心を根底から動かしている性的エネルギーであるリビドーが、過去のある時期において阻止され、満たされなかった体験——心的外傷(トラウマ)——によって、リビドーの固着があった場合、のちに何らかの偶発的な外傷的体験によって、その過去のリビドーの固着点に無意識に退行して起きる現象が神経症であると説いた。

 しかし統一思想から見れば、人間を根底から動かしているのは性的エネルギーではなく、心情(愛したい、愛されたいという衝動)である。したがって、人間の心の傷となって神経症を引き起こしている本質的なものは、幼児期の性的外傷や過去のリビドーの固着ではなく、心情の傷であり、愛の傷である。性的な傷やリビドーの固着も、もちろん傷の一部をなしているが、それがすべてではない。より根本的には愛の傷なのである。すなわち周囲の人たちから冷たくされたり、虐待されたり、あるいは周囲の期待にこたえられなくて挫折したりしたことによる愛の傷が原因なのである。

 さらに心理的な問題は、幼児期の体験のみならず、霊界の先祖たちまでさかのぼると見るのである。すなわち、われわれの心の傷は、幼児期からの心の傷のみならず、先祖たちの心の傷(悲しみ、怨み、憎しみなど)も加わっているのである。なお、心の傷には、他人から受けた傷と他人に与えた傷がある。先祖たちが他人に与えた傷は、傷を受けた人(霊人)の怨念となって、傷を与えた霊界の先祖たちと、地上のその子孫たちに降りかかっているのである。したがって心の病気の解決は、個人の幼児期からの精神的な治療だけでは不十分であり、霊界までさかのぼって、先祖たちの心の傷を解決することまでなされなくてはならない。それは真なる宗教によって、初めてなされるのである。

 カール・ユングは、個人の意識の下には個人的無意識(各人独自の経験に由来する抑圧された記憶や欲望)が横たわっていると言い、さらに深いところに集団的無意識(われわれの先祖から相続した記憶や行動パターン)があると考えた。そのようなユングの心理学は統一思想の見解を裏づけるものと言えよう。

 心の傷を癒やすのは真の愛である。したがって、愛によって幼児期からの心の傷を癒やすのみならず、霊的に先祖の心の傷を癒やしていくことも必要である。それは宗教が果たすべき課題である。しかしながら、心理的な治療のみならず、形状的な生理学的治療も必要である。すなわち、性相的には霊界の先祖解放と精神療法を行いながら、形状的には最先端の現代医学による生理学的治療によって、この問題は解決されるようになるのである。


*71 ジョン・ホーガン、竹内薫訳『続・科学の終焉』徳間書店、2000年、184頁。

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 次回は、「歴史的考案①」をお届けします。


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