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共産主義の新しいカタチ 15

 現代社会に忍び寄る“暴力によらざる革命”、「文化マルクス主義」とは一体何なのか?
 国際勝共連合の機関紙『思想新聞』連載の「文化マルクス主義の群像〜共産主義の新しいカタチ〜」を毎週水曜日配信(予定)でお届けします。(一部、編集部による加筆・修正あり)

「エンゲルス後」の対立から修正主義に
独社民党と第2インター➁

▲1871年、ドイツ帝国が成立

べーベルとカウツキー軸に正統派を形成
 
前回述べたように、党内思想闘争がマルクス生前からあり、「ゴータ綱領」を経て、マルクス思想を体現したものとしてエンゲルスが「お墨付き」を与えた「エルフルト綱領」を1891年に採択し名実共に「共産党」となったのです。

 そして、エンゲルスがマルクスと育てた党の「行く末」について述べたのが、「資料」に掲げた「政治的遺言」です。ドイツ社民党はマルクス=エンゲルスの遺志を継いだものの、エンゲルスの死後、マルクス主義解釈をめぐり党派抗争(修正主義論争)を展開。

 ベーベルはマルクスの「後継者」と目された反ビスマルクの国会議員で、エンゲルスの『家族・私有財産・国家の起源』以前に『婦人と社会主義』(1879)を著した理論家です。「社会主義革命なくして婦人の真の解放がない」と論じ、エンゲルスにも影響を与えたのです。

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 一方、ルイゼ・カウツキーは、「ドイツ社民党の正統派」を自任する理論的指導者カール・カウツキー(1854〜1938)の前妻で、エンゲルスの晩年を助けました。彼女を信頼したエンゲルスは離婚をめぐりカール・カウツキーを嫌ったのです。しかし彼が後の共産主義運動へ与えた影響には多大なものがあります。

正統派の急先鋒だったベルンシュタイン
 カウツキーは思想面でベーベルと同調し、ベルンシュタインの修正主義に反対。しかし、レーニンのロシア革命によるプロレタリア独裁論を激しく批判し対峙することになります。

▲エドゥアルト・ベルンシュタイン

 ベルンシュタインは、ドイツ社会民主党で「修正主義の創始者」と呼ばれることになる人物です。実質的かつ有力なエンゲルスの後継者の一人であり、機関誌『社会民主(ゾツィアル・デモクラート)』の編集の中心メンバーでした。その意味で党の中核メンバーと目されながら、特にマルクスの「貧困増大の法則」を批判し、社会革命を否定、議会主義による漸進的社会主義の実現を提唱し、のちにヨーロッパの社会主義に大きな影響を与えました。

 ベーベルはこの「修正主義」に反対、さらに急進的共産主義者、特にローザ・ルクセンブルクらはこれを厳しく批判しました。しかし民主主義の本義からすれば、ベルンシュタインの判断の方が正しかった、ということは歴史が証言していると言えるのです。

 ベルンシュタインはベルリンで機関車運転手の子に生まれ、1872年にベーベルやW・リープクネヒトらの指導する社会民主党アイゼナハ派に入党。その動機は当時銀行員だった彼が、不正が横行する取引所の腐敗ぶりに幻滅したからです。その意味では、ベルンシュタインは「生え抜き」のマルクス主義者ではなかったと言えるでしょう。

 さてビスマルクがラサール派を懐柔し、成立させた「社会主義鎮圧法」によって国外生活を余儀なくされたベルンシュタインは、スイス・チューリッヒなどに移り住み、ロンドンのエンゲルスと緊密に連絡を取り合いながら、機関誌編集に携わります。この頃のベルンシュタインは誰の目にもエンゲルスの意向に忠実な「正統派」の急先鋒として映りました。

 「ベルンシュタインの急進的立場は、ビスマルクによる社会主義運動弾圧と資本主義早期崩壊への期待とを背景としていた」(『ベルンシュタイン 亡命と世紀末の思想』)と亀嶋庸一・成蹊大教授が述べるように、19世紀の最後の四半世紀における世界的大不況に見舞われていた社会的背景がマルクスの理論の正しさと資本主義の早期崩壊を実証しているかのように見なしていたようです。

 しかしそうした中にあっても、「マルクス主義正統派」の人々とは独自なものであった点は、革命をめざす「セクト集団」から「議会主義政党」への脱皮を試みていたということです(1884年の帝国議会選挙において、ドイツ社民党は議席を倍増させました。このような事実から、先に掲げたエンゲルスの「政治的遺言」がなされたことに注目すべきでしょう)。

「思想新聞」2024415日号より

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