2024.06.03 22:00
facts_3分で社会を読み解く 18
4月にフランスで「反カルト法」の改正案が可決
ナビゲーター:魚谷 俊輔
2024年4月9日にフランスの「反カルト法」が改正された。
これは2001年に制定された「アブ・ピカール法」という悪法を、さらに悪化させた法律であるといえる。
より具体的に言えば、「アブ・ピカール法」の起草者たちが憲法上の懸念により断念せざるを得なかった、「心理的服従」という名の事実上の「洗脳」罪を導入する決断をしたということなのだ。
フランスには「カルト的逸脱」と闘う政府機関であるMIVILUDES(セクト的逸脱行為関係省庁警戒対策本部)があるが、今回の法改正を主導したのは彼らだった。
彼らは数年前から、サイエントロジーやエホバの証人などの新宗教を「洗脳」罪で告発できるようにするための法改正を政府に求めてきた。
西洋の民主主義国家であるフランスでこのような法律が制定されたことは、宗教の自由に対する重大な脅威であるといえる。
そこで今回から、この法律が制定された経緯と、その問題点、日本への影響などについて解説することにしよう。
全国弁連(全国霊感商法対策弁護士連絡会)の紀藤正樹弁護士などは、日本では「カルト」を取り締まる法整備が遅れており、フランスの「反カルト法」に似たようなものを日本に導入しなければならないと提案している。
ここでは日本人に分かりやすいように「カルト」という表現を用いているが、社会的に批判されている新宗教のことをフランス語では「カルト」とはいわずに「セクト」という。
このシリーズではこの二つは同じ意味であると思って読んでいただきたい。
そもそも「反セクト法」とは何であり、それがどのように生じたのかを手短に説明しよう。
1994年、1995年、そして1997年に「太陽寺院」として知られる秘密主義の新宗教運動が、スイス、フランス、およびカナダのケベック州で数十人の命を奪う集団自殺および殺人を組織的に行った。
この事件はフランスですさまじい国民的感情を引き起こした。
フランスでは、「太陽寺院」事件の後、「セクト」について調査する議会委員会が設置され、その報告書が1995年に発表された。
この報告書は主に二つのことを提案しており、それは「セクト」と闘うための省庁間機関を設けることと、新たな「反セクト法」を通過させることだった。
「セクト」と闘うための機関は1996年に設立されたが、それが今日のMIVILUDES(セクト的逸脱行為関係省庁警戒対策本部)となったのである。
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