2024.05.23 12:00
ほぼ5分で読める勝共理論 30
ヘーゲルの弁証法
編集部編
弁証法を完成させたヘーゲル
「弁証法」とは、開かれた心で対話をすることで真理に至ろうとする方法のことです。
「弁証法を完成させた」といわれている人がいます。ドイツの哲学者でヘーゲル(1770~1831)という人です。
ヘーゲルの弁証法を簡単に説明してみましょう。
例えば、「日本人は優しい」という説明があったとします。この説明のことを「命題」とか「テーゼ」と言ったりします。
ヘーゲルは、ある命題があれば、必ずその中に矛盾する反対の命題が含まれていると言いました。
「日本人は優しい」という命題があれば、必ずそれを否定する「日本人は優しくない」という反対の命題が生まれるということです。
最初の「日本人は優しい」という命題を「正」、次の「日本人は優しくない」という命題を「反」とします。
するとこの二つの命題は、「日本人には優しい人もいれば、優しくない人もいる」という命題に統合されます。
ちょっと哲学的に表現すると、「二つの異なるものが、単に相手を否定するのではなく、より高い次元で統合される」ということになります。
こうしてできた命題が「合」です。
このように、命題をより高い次元に発展させる作用のことを、ヘーゲルは「正反合」と言いました。
物事の発展には、正、反、合の三段階があるというわけです。
ヘーゲルの哲学を利用したマルクス
もう一つだけ、ヘーゲルの挙げた弁証法の具体例を見てみましょう。
ヘーゲルは、人間の道徳の基本には「家族」があると言いました。
家族は愛情によって結び付いています。でもその代わり不自由でもあります。家族のために親は仕事をしたり子育てをしたりしなければなりません。
それで人々は、家族の愛情を否定しました。そして個人主義的な「市民社会」を求めるようになりました。
家族の一員としての自分ではなく、自由な自分、自分らしい自分を探し始めた、というのです。
でも人々は、やはり何かが足りないと感じ始めました。
原因は家族の愛情を否定したことです。どんなに自由を手に入れても、人は家族の愛情がなければ喪失感を抱いてしまいます。
それで人々は、「幸福とは何なのか」と考えるようになりました。
ここで弁証法風に考えると、「家族を大切にすべき」という命題が正です。「個人の自由を大切にすべき」という命題が反になります。
この二つの命題がより高い次元で統合されることになります。そうして人々が求めたのが、新しい「国家」でした。
このヘーゲルの考えは、革命によって新しい国をつくろうとする人たちに大きな影響を与えました。
本当の国家は人間を幸福にしてくれる。それは家族と自由をより高い次元で統合する国家である、という考えです。
こうしてヘーゲルは、弁証法に従うことで物事は発展する、人々は理想を追求することができると言ったのです。
これがヘーゲルの弁証法です。
実はこのヘーゲルの弁証法の根底には、「人間は精神的な存在である」という考え方があります。
人間の精神性や知性が発展することは良いことだ。人間や世界が発展することは神に近づくことだ。それは素晴らしいことだ、という考えです。
ある意味でヘーゲルの哲学は、人間や社会が神の領域に到達して完成するための理論といっていいでしょう。
マルクスはこのヘーゲルの理論を利用しました。
でも中身は正反対です。それがどんな内容なのかについては次回、お伝えしたいと思います。
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