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世界はどこに向かうのか
~情報分析者の視点~

米国が中国に制裁を「警告」

渡邊 芳雄(国際平和研究所所長)

 今回は、422日から28日までを振り返ります。

 この間、以下のような出来事がありました。

 ドイツ、中国のスパイ容疑で男を拘束(4月23日)。米国、4カ月ぶり本格的なウクライナ軍事支援へ(24日)。麻生太郎氏が訪米しトランプ氏と会談(24日)。米ブリンケン国務長官、習近平主席と会談(26日)、などです。

 米国のブリンケン国務長官が4月24日~訪中しました。
 翌26日には、北京の人民大会堂で習近平主席と会談しています。

 ブリンケン氏は会談で、軍事転用可能な製品のロシアへの輸出を中止するように求めました。
 証拠を示すことができるとも伝えたのです。習氏は、強く反発したとみられます。

 習氏との会談に先立ってブリンケン氏は王毅外相と約5時間半、釣魚台国賓館で会談しています。

 そこでも、中国の支援がロシアの攻勢を下支えしているとみている、中国が支援を中止しなければ「追加措置の用意がある」と伝えたのです。新たな制裁を科すということです。
 王氏は「法にのっとり輸出管理している」(外務省)と反論しました。

 「証拠」といえる内容が英紙テレグラフ(電子版)で25日に報じられました。
 北朝鮮からロシアに武器を輸送しているとみられるロシアの貨物船が中国の港に停泊しているという動かしがたい事実が判明したのです。

 英政策研究機関「王立防衛安全保障研究所」(RUSI)が入手した衛星画像によるものであり、国連安保理の決議に違反する北朝鮮の武器輸出を中国が支援している実態を裏付けるものとなっています。
 中国への国際的批判が改めて高まるのは必至です。

 問題の「衛星画像」は、ロシアの貨物船「アンガラ」が今年2月から中国東部浙江省にある中国最大級とされる造船所に停泊しており、同船は昨年8月以降、北朝鮮の武器や弾薬が入っているとみられるコンテナ数千個をロシアの港に輸送したとされます。
 中国の造船所では、修理や機器のメンテナンスをしているとみられる内容なのです。

 ブリンケン氏は26日の習近平主席との会談の後、英BBC放送に、中国の対ロ支援に対抗措置を取ると言明しました。
 対抗措置としての制裁は、中国の対応に変化がない場合に一部銀行を国際金融システムから切り離す制裁に踏み切る方針といわれています。

 ブリンケン氏は一連の会談で、南シナ海問題も取り上げました。
 中国によるフィリピン船への放水を「危険な行為」と非難し、台湾海峡の「平和と安定の重要性」を強調してけん制したのです。

 王毅外相は、台湾問題は「越えてはならない一番目のレッドライン」と強調。「内政干渉」しないように要求しました。
 そして日米比などの連携を念頭に「地域の国々にどちらに就くかを強要するのをやめるべきだ」とも語っています。

 米国側の中国への要求は通商面にもあります。
 中国製の電気自動車(EV)や太陽光パネルが新たな火種になっているのです。中国企業が巨額の補助金を使って安価な製品を過剰に生産し、欧米に輸出しています。

 バイデン大統領は17日、中国製の鉄鋼やアルミはダンピング(不当廉売)の疑いがあるとして制裁関税を3倍に引き上げると表明しています。

 いろいろな、しかし極めて重要な内容を中国側にぶつけたブリンケン氏でしたが、今回の訪中の主要目的は、台湾・頼清徳政権の発足に合わせて中国が大規模な軍事演習に踏み切らないようにくぎを刺す狙いがあったといえるでしょう。

 今後の中国の動きに注目が集まります。



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