2024.04.29 22:00
facts_3分で社会を読み解く 13
日本における「マインド・コントロール言説」に関する判決
ナビゲーター:魚谷 俊輔
東京地裁で審理されている世界平和統一家庭連合(家庭連合)に対する解散命令請求訴訟に、私が提出した意見書の内容紹介の8回目である。
今回は日本における「マインド・コントロール言説」に関する判決を紹介した上で、なぜ「マインド・コントロール言説」を信じる人がいるのかについて解説する。
「マインド・コントロール」という概念が日本の法廷で初めて争われたのが、統一教会(現・家庭連合)を脱会した元信者らが統一教会を相手取って起こした、一連の「青春を返せ」裁判であった。
これらの裁判で初めて下された判決が、1998年3月26日の名古屋地裁判決である。
この判決では統一教会側が勝訴し、「マインド・コントロール言説」は明確に否定されている。
この他にも、1999年3月24日の岡山地裁判決、2001年4月10日の神戸地裁判決でも統一教会側が勝訴しており、「マインド・コントロール言説」は否定されている。
一方で、統一教会は敗訴したが、不法行為の根拠として「マインド・コントロール」を認めなかった判決が存在する。
それが2000年9月14日の広島高裁判決である。
この判決では、「マインド・コントロール」という概念は心理状態を説明しているだけで、不法行為が成立するかどうかを判断するときの道具には使えないと言っている。
結局、「マインド・コントロール」の存在やその効果は立証できないので、その後も統一教会を相手取った民事訴訟では、「マインド・コントロール」を違法性の根拠とした判決は出ていない。
それでは、「マインド・コントロール言説」の効果は科学的に証明されておらず、裁判において違法性を裏付ける根拠としても認められていないにもかかわらず、「マインド・コントロール」なるものが存在するとかたくなに信じる人々がいるのはなぜだろうか。
ここでは特に、娘や息子が「カルト」と呼ばれる宗教団体に入ってしまったことに困惑した親たちが「マインド・コントロール言説」を信じる理由を分析したい。
それは一言で言えば、「感情論理」ということになる。
親と子どもと「カルト」という三者の関係において、親が子どもを愛しており、かつ「カルト」に対して不信の思いを抱いているとすれば、親としては愛する子どもがいかがわしい「カルト」を本気で信じているというのは、心理的に受け入れ難いのである。
それで親から見ると、カルトは子どもたちをだまして搾取しているのだと考えた方が感情的に腑(ふ)に落ちるのだ。
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解散命令請求訴訟に提出した意見書08