2024.04.22 22:00
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「マインド・コントロール言説」に批判的な宗教学者たち
ナビゲーター:魚谷 俊輔
東京地裁で審理されている世界平和統一家庭連合(家庭連合)に対する解散命令請求訴訟に、私が提出した意見書の内容紹介の7回目である。
今回は「マインド・コントロール言説」を批判している日本の宗教学者3人を紹介する。
日本女子大学元教授でテレビ出演も多い島田裕巳氏、北海道大学教授の櫻井義秀氏、埼玉大学非常勤講師の大田俊寛氏である。
島田氏は、洗脳やマインド・コントロールという概念は、そのテクニックそのものが問題とされているというよりは、特定の教団を批判するための武器として使われていると指摘する。
つまり、ある教団が洗脳を行っていると批判しているのは、その教団と思想的に対立している勢力であり、教団からの脱会工作に従事している人々だというのである。
島田氏によれば、マインド・コントロールなるものが実在するのかどうかは極めて怪しく、実際には教団に対する否定的な評価が前提として存在し、そんなおかしな教団の教えを信じてしまうのは、マインド・コントロールによるものであるとしか説明しようがないと言っているに過ぎない。
そして、マインド・コントロール言説が脱会工作を正当化するための理論として用いられていることも島田氏は鋭く指摘している。
現在では家庭連合批判の急先鋒(きゅうせんぽう)に立っている櫻井義秀氏も、かつてはマインド・コントロールに対して厳しく批判していた。
彼もディプログラマーが自己の行為を正当化するためにマインド・コントロール論を用いていることは看破している。
彼はマインド・コントロール論の「騙(だま)された」という言い方に対して特にこだわって批判している。
「騙されたと自ら語ることで、マインド・コントロール論は意図せずして自ら自律性、自己責任の倫理の破壊に手を貸す恐れがある」というのである。
信者が教団に入信する際には、さまざまな内的葛藤を経験するが、その結果としていかなる決断をしたとしても、その帰結は選択した本人が引き受けなければならない。
そのような覚悟を信仰者は自覚すべきだというのである。
大田俊寛氏は、西田公昭氏の「マインド・コントロール理論」は、実際には宗教的回心全般に当てはまってしまうと批判している。
大田氏はさらに、マインド・コントロール論の弊害として、法秩序の崩壊を挙げている。
もし法廷で「マインド・コントロール」なる概念が認められたら、審理が著しく困難になり、個人の主体性に立脚する近代の法秩序は、根底から瓦解(がかい)することになるというのである。
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解散命令請求訴訟に提出した意見書07