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facts_3分で社会を読み解く 11
西田公昭氏の「マインド・コントロール言説」の問題点

ナビゲーター:魚谷 俊輔

 東京地裁で審理されている世界平和統一家庭連合(家庭連合)に対する解散命令請求訴訟に、私が提出した意見書の内容紹介の6回目である。

 立正大学教授の西田公昭氏は日本における「マインド・コントロール理論」の第一人者であるといわれている。
 彼が「マインド・コントロール」について説明した著作の中で言っていることは、まとめてみれば非常にシンプルである。

 まず彼は、社会心理学の研究者として過去の文献を読んで、その理論を勉強した。この理論をAとする。
 次に彼は、「破壊的カルト」と呼んで批判している団体の元信者から聞き取り調査を行っている。この情報をBとする。
 そしてAの理論をBに当てはめて解釈し、「マインド・コントロール」に関する理論構築を行った。要するにそれだけである。

 彼がAとBを結び付ける根拠は、単に「やり方が似ている」ということだ。
 彼がやっていることは、「解釈」によってそれらを結び付けているだけで、実際には何も検証していないのである。

 彼の研究の欠陥は、①教会を離れた元信者からしかデータを取っておらず、現役信者に対する調査は行っていないこと、②実験室での結果をそのまま現実の社会過程に適用してしまっていること、③社会心理学者を自称する者ならば絶対に避けて通れないはずの数値的なデータによる裏付けが欠如している、ということである。

 彼は自説を補強するために、さまざまな実験データを引っ張り出してはいるが、そのほとんどが宗教とは直接関係のない実験結果ばかりであり、肝心の彼が「破壊的カルト」と呼ぶ宗教団体の説得術がどのくらい効果的であるかを、数値に基づいて検証したデータは一つもない。

 日本においてこの点を実証的に検証したのが、国士館大学教授(当時)の塩谷政憲氏であった。
 彼は1974年の春に原理研究会が主催する3泊4日の修練会に自ら参加し、その時の体験を「原理研究会の修練会について」という論文で報告している。

 その修練会に参加した15人(男9、女6)のうち、次の7日間の修練会への参加に応じたのは男子2人(約13%)に過ぎなかった。
 「したがって、洗脳を思想の強制的な画一化と定義すれば、筆者が体験したところの修練会は、洗脳よりも選抜することの方に結果したといえよう」というのが彼の結論であった。

 塩谷氏は修練会の詳細なスケジュールや雰囲気を描いているが、結論として、洗脳といえるほど激しく態度変容を迫るものではないと述べている。

【関連情報
「洗脳」「マインド・コントロール」の虚構を暴く

解散命令請求訴訟に提出した意見書06

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