2024.04.08 22:00
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日本における「マインド・コントロール言説」と強制改宗
ナビゲーター:魚谷 俊輔
東京地裁で審理されている世界平和統一家庭連合(家庭連合)に対する解散命令請求訴訟に、私が提出した意見書の内容紹介の5回目である。
米国ではディプログラミングは犯罪であるという評価は定着しており、すでに過去のものとなっている。
特にその活動の中心組織であった「カルト警戒網(CAN)」が多額の賠償金の支払いを裁判所に命じられて1995年に破産したことは、米国におけるディプログラミングの終焉(しゅうえん)を決定的なものにした。
今回から、日本における「マインド・コントロール言説」と強制改宗の関係について論じることにする。
家族に脱会の支援をする「反対牧師」は、信者の両親に対して子供は「マインド・コントロール」された状態にあることを徹底的に教育するという。
その結果、親や家族は、子供が自分の意思で「カルト」に入ったのではなく、「マインド・コントロール」によってだまされて入信させられたのだと考えるようになる。
「カルト」に批判的な立場のカウンセラーや心理学者の「マインド・コントロール言説」は、この見方に権威付けを与える役割を果たす。
そのためによく使われる書籍が、スティーヴン・ハッサン著『マインド・コントロールの恐怖』と西田公昭著『マインド・コントロールとは何か』である。
埼玉大学非常勤講師の大田俊寛氏は、こうした教育が信者に対する暴力的な拉致や、長期間にわたる監禁説得を正当化し、強制脱会をビジネス化していると批判している。
このようにして、拉致監禁により強制的に脱会させられた元信者たちが、「自分は統一教会によってマインド・コントロールされた」と主張して、教会を相手取って損害賠償を請求する訴訟が、「青春を返せ」裁判である。
その一例として私は、札幌における「青春を返せ」裁判の原告となった元信者たちの裁判調書を分析し、彼女たちの大多数(75%)が身体を拘束された状態で説得され、脱会に至った事実を発見した。
文部科学省は解散命令請求訴訟に家庭連合の「被害者」の陳述書を提出しているが、その中には拉致監禁によって強制脱会させられた、上記の札幌「青春を返せ」裁判の原告が含まれているのである。
このように、①「マインド・コントロール言説」によるディプログラミングの正当化→②ディプログラミングによる脱会者の生産→③脱会者の訴訟による「マインド・コントロール言説」の主張、という悪循環がつくられているのである。
【関連情報】
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解散命令請求訴訟に提出した意見書05