2024.04.09 22:00
脱会説得の宗教的背景 34
超越と内在性の両者を兼ね備えた統一原理の神観
教理研究院院長
太田 朝久
YouTubeチャンネル「我々の視点」で公開中のシリーズ、「脱会説得の宗教的背景/世界平和を構築する『統一原理』~比較宗教の観点から~」のテキスト版を毎週火曜日配信(予定)でお届けします。
講師は、世界平和統一家庭連合教理研究院院長の太田朝久(ともひさ)氏です。動画版も併せてご活用ください。
<統一原理の神観>
次に、神の「超越」と「遍在(内在性)」を説く「統一原理」について説明します。
統一原理はキリスト教と同じ「超越神」ですが、「汎神相論」を説きます。
これは、「神相」(性相・形状、陽性・陰性の二性性相)が、あまねく被造世界に行き渡っているという「汎」「神相」論という意味で、「汎神論」ではありません。
神は、人間や被造世界をご自分に“似せて創造”されたということです。
統一原理の神観は、今まで対立してきた「唯物論」と「唯心論」を和合統一するだけでなく、神の“超越”と“内在性”をも和合する観点を持っており、キリスト教と東洋思想も“和合させ得る”ものです。
すでに「無限応形性」について説明する中で述べたように、神は、ご自身の「本形状」(前エネルギー)を使って、被造世界を創られました。
「創造の二段構造」の図に見るように、神は、ご自分の本性相(ロゴス)と本形状(前エネルギー)の授受作用によって、被造世界を創られました。
被造世界(宇宙)は、神の本形状(前エネルギー)を“素材”として創造したという意味では、被造世界は“神の体”(本形状)の“延長体”のようであると言えます。
すなわち、物質の質料が元々神の本形状(物質の原因)の“要素”からできているため、延長体のようであり、ある意味で、神と被造世界は“連続”している側面もあります。
しかし創造の二段構造から分かるように、被造世界は、神が「本性相」(ロゴス)によって「本形状」(前エネルギー)を“規定”することで創造した被造物であるために、もし被造世界(宇宙)が消滅したとしても、汎神論のように、それで神も消えてしまうという汎神論的な距離で被造世界が創造されているのではありません。
もし被造世界が消滅した場合は、それは根源であった本形状(前エネルギー)という“元の状態”に戻ってしまうということであり、神が消えてしまうわけではありません。
つまり、統一原理の説く神はどこまでも「創造神」であり、「超越神」なのです。神は、被造世界と“分立”(分離)している点で“非連続”なのです。
結局、統一原理の神観は、キリスト教の創造神を説きつつも、超越プラス遍在(内在性)なのです。
統一原理から見た“祈り”は、親なる神の人格と、子なる人間の人格が分離しているため、キリスト教と同様に、人間は神に話しかけることが可能です。
しかし統一原理は、人間が「個性完成」すれば、神と完全一体となり、霊人体の中心部分である「生心」に“神が臨在”すると説くため(『原理講論』86ページ)、究極的には“本心”(良心)に聞くことが、祈りになり得ると考えます。
ただし、それは祈祷がいらなくなるという意味ではなく、より生活に密着したものとなるということです。
従って、祈りは、対話プラス独白(自問自答)でもあると言えます。
このように、統一原理は唯物論と唯心論を和合統一するだけでなく、キリスト教の超越と、東洋思想の内在性の両者を兼ね備えた神観なのです。
(続く)
※動画版「脱会説得の宗教的背景 第8回『唯物論』と『唯心論』の和合統一〈その3〉」はこちらから