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共産主義の新しいカタチ 6

 現代社会に忍び寄る“暴力によらざる革命”、「文化マルクス主義」とは一体何なのか?
 国際勝共連合の機関紙『思想新聞』連載の「文化マルクス主義の群像〜共産主義の新しいカタチ〜」を毎週水曜日配信(予定)でお届けします。(一部、編集部による加筆・修正あり)

「人間の獣化」と「反文明」
ジャンジャック・ルソー①

 「マルクス後」に入る前に、マルクス以前の文化共産主義者として欠かせない3人の思想家を取り上げます。まずクロード・レヴィストロースが「人類学の父」と呼んだジャンジャック・ルソーです。

 上智大名誉教授の渡部昇一氏は生前の講演で、1970年代の米国で「家庭の価値」が危機に瀕した理由の一つはルソーの影響だとし「戦後日本の左翼はマルクス・レーニン主義を背景に家庭の価値を破壊しようとした。このイデオロギーを仰ぎ見なくなった今、日本の家庭破壊論者が徹底するのがルソーの思想で…家庭が崩壊した人は自分が置かれる状況を正当化したいが為に、ルソー主義を振り回す」と警告しました。

 また渡部氏は『教育を救う保守の哲学』の中で「家族の廃止!…両者(ブルジョワと家族)は資本の消滅とともに消滅する」と述べたマルクス/エンゲルスの『共産党宣言』だが、その原型となった世界最初の家族解体論はルソーの『人間不平等起源論』だと喝破(かっぱ)しました。

▲渡部昇一氏(左)はルソー(右)の『人間不平等起源論』こそ、『共産党宣言』の家族解体論の原型だと指摘した

「孤児院送り」こそが育児の社会化の本質
 「子育て支援=育児の社会化」政策が、「少子化対策」と位置づけられますが、育児を社会に「丸投げ」することは、子育てを通し「親」となり子を持つ「喜び」を放擲(ほうてき)し絆を破壊し、子供を「孤児院」に送るのと変わらないのです。

 しかしキリスト教倫理が支配的だった18世紀に、公然と「実践」したのがルソーその人です。カントが愛読し教育論や教育心理学で「聖典」視される彼の教育小説『エミール』も、実はトンデモない代物です。

 渡部氏は「少年エミールは《親と別れて孤児になります》と先生に誓っていますから、親子切断を煽動していて、これも家族解体の書」と述べます(前掲書)。

 元来、ルソー自身が「孤児」という境遇にあり、「家庭的愛情」とは無縁の人生を過ごしました。一見、説得的に見える『エミール』も、自分の境涯(きょうがい)を正当化する論理が根底にあり、同時代の哲学者ヴォルテールは、「女に産ませた子供3人を棄ててしまった。エミール殿の教育に専念するため、またエミールを立派な指物師にするために」とルソーの「言行不一致」ぶりを痛烈に皮肉ったのです。

 ところがルソーは、3人どころか女中あがりのテレーズとの間に生まれた5人を全て孤児院に送りました。彼の弁解では、経済的余裕がなく、「子供が家にいると騒がしく文筆活動ができない」「子供は国家で教育され自分の父親を知らず全部が国家の子供になるのがよい」と、女性の社会進出を妨げるのが家事・育児と見なすフェミニズムと軌を一にするのです。

 自分の出生で死別した母の影を追い求めたルソーの生涯は、破廉恥な醜聞に満ちていました。

 若い女性の前で下半身を露出したり、知的障害女性をレイプし妊娠させる事件を起こしたり、書生を務めた家で窃盗するなど、揶揄(やゆ)では済まない奇行・犯罪を繰り返します。またルソーが献呈した『人間不平等起源論』を読んだヴォルテールは「あなたの書を読むと、四つ足で歩きそうだ」と書き送りました。つまり、同書は「獣化した人間」を「自然人」と美化し表現していると言えます。

「反文明教」がポル・ポトの狂気に
 ルソーはアカデミーの懸賞論文に当選した『学問芸術論』で「学と芸術の進歩が人間を堕落させる」とし、次の『人間不平等起源論』は、人間の「自然人」としての立場を理想とし、文明が生じて貧富格差や階級、社会悪が生じたとします。堕落した社会から「自然人」としての本来性を回復するため神・自然などを排除し「人間の自由意志のみによって社会を築くべし」と説いたのが『社会契約論』で、人民主権の聖典としてフランス革命の理論的支柱となりました。

 ルソーは「自然に帰れ」と唱えるも、その自然とはヴォルテールが「人間の獣化」と揶揄するほど知識人には受け入れ難いものです。実際、ルソーの『エミール』を読むと、首を傾げざるを得ない箇所が散見されます。例えば、子供が怪我や病気でも、医者にかかるなというのです。

 この医療不信、というより「医師は人民の敵」と見なす恐るべき社会が現実に到来したのがポル・ポト率いるクメール・ルージュ支配下のカンボジアでした。

▲ポル・ポト(ウィキペディアより)

 ポル・ポトは毛沢東主義に加えさらにルソー思想が大きな影響を及ぼし、インテリ階級を徹底殲滅(せんめつ)したのです。だからインテリ層の人々が、「プロレタリアの敵」として粛清されました。(続く)

「思想新聞」2024215日号より

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