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シリーズ・「宗教」を読み解く 311
修道院の祈り⑨
カール大帝の治世と修道院の貢献

ナビゲーター:石丸 志信

 修道士たちによって構成され、キリスト教の本質を追求してきた祈りの共同体たる修道院は、時代時代で刷新を繰り返しながら、キリスト教の伝統を今日までつないできた。

 カール大帝の治世である8世紀のフランク王国に安定と繁栄がもたらされるようになったのは、修道院の貢献が大きい。

カール大帝(ウィキペディアより)

 フランク族をキリスト教王国に教化したのは、ベネディクト会の修道士たちによる宣教教化活動だった。
 カール大帝はフランク王国の文教政策の柱に、彼らの力を活用した。『聖ベネディクトの戒律』に記されたとおり、修道士が共に住んで、秩序だった祈りと勤勉な労働の生活に励む聖ベネディクトの修道院に、文化の担い手となることを期待した。

 大帝は、全ての修道院に学校設立を指示する勅令を発し、修道院を図書館や写本制作室を持つ教育センターへと変えていく。
 修道士たちが教師であり、聖書の研究者として、国家に有能な人材を育成していく。また、帝国の版図が拡大されると、その地にも修道院を建立し、そこでも宣教と教育の拠点としての役割を果たすようになる。

 カール大帝はこうしたキリスト教化に基づく統一された王国づくりのために、内外から高名な学者、修道士らを宮廷に集め、宮廷付属学校を設立しエリート教育にも当たらせている。また、平易で美しいラテン語で翻訳された規範版の聖書を整えて普及させ、国民が共通の言語でみ言を学び、祈り、教え伝える文化を生み出していく。

 カール大帝自身は読み書きが十分できなかったようだが、修道士たちに古典を読ませ、それを聞いて学んだ。
 46年間、キリスト教王国の至高の統治者として振る舞った彼が、食事中最も好んで耳を傾けたのは、ヒッポの司教・聖アウグスティヌスの『神の国』であったといわれている。

 カール大帝によって推進された国民の教育再生と中世キリスト教社会の復興運動は、「カロリング・ルネサンス」と呼ばれる。
 修道院で培われた祈りと学びの伝統が、強いリーダーシップを持つ為政者の心を捉え、国家のビジョンとして実践されて新たな文化を形成していった一例である。



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