2024.03.26 17:00
シリーズ・「宗教」を読み解く 310
修道院の祈り⑧
祈りの共同体から世界へ
ナビゲーター:石丸 志信
6世紀、「西欧修道士の父」といわれる聖ベネディクトが創立した修道院は、祈りの共同体だった。
『聖ベネディクトの戒律』(以下、『戒律』)の冒頭には、「まず、どのような善いおこないを始めるにあたっても、神がそれを完成に導いてくださるように、心を尽くして祈りなさい」と記されている。
初代教会の理想と院修士たちの格闘の跡をたどりながら、キリスト教の本質を追求する生活形態として生まれてきた祈りの共同体は、それぞれ主の招きに応え、キリストに仕えるために集ってきた者たちで構成されていた。
彼らは、『戒律』に示されたとおり、神のみ言に耳を傾け、実践し、完成に至る道を歩み続けた。
クリュニー修道院が『戒律』に従って半世紀の歳月を経てその基を据えた頃、一つの大きな実りがもたらされた。
「主に仕えるための学校」と聖ベネディクトが呼んだ修道院の生活で育まれた新しい時代を切り開く指導者が登場してくる。
590年に修道士出身の聖グレゴリウス1世(550頃~604/在位590~604)が教皇の座に就いた。
彼は、西ローマ帝国が亡びゆく時代に登場し、教会改革と典礼の刷新に努め、ゲルマン民族の教化に積極的に取り組んだ指導者で、後に「大教皇」と呼ばれる。
キリスト教史においては、この時から中世が始まったといわれる。
ある神学者はこの「大教皇」を次のように評する。
「聖グレゴリウスはその滅亡を悲しみつつも、ゲルマン諸民族の台頭の中に時代の転換と創造の新しいしるしを認識した。滅亡する古代世界を誕生する中世世界へと導き、未来をキリスト教的に形成することが教皇職を担った聖グレゴリウスの歴史的使命であった」
彼の取り組んだ改革の一環として、各地に建てられた修道院が、宣教と教育の拠点となっていく。
からし種のような小さな祈りの共同体は、やがて、そこで育まれた指導者を通して、国家世界共同体へと発展していくことになる例を示している。
【参照】
①古田暁訳『聖ベネディクトの戒律』(すえもりブックス、2000年)
②鈴木宣明著『教会博士~霊性史』(聖母の騎士社、1996年)
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