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シリーズ・「宗教」を読み解く 312
修道院の祈り⑩
クリュニー修道院

ナビゲーター:石丸 志信

 フランク王国の興隆に尽くしたベネディクト修道会は、10世紀を迎えると、『ベネディクトの戒律』に立ち返り、修道生活の刷新の時を迎えた。
 ブルゴーニュ地方のクリュニーに新しく立てられた修道院がその拠点となった。


かつてのクリュニー修道院聖堂跡に唯一残された南翼(ウィキペディアより)

 クリュニー修道院はこの伝統と時代精神を結び付け、一つの方向に徹底していく。
 「神あるいは聖体に対する典礼的奉仕、それも共同体祭儀として絶え間なく繰り返される共誦祈禱(きょうしょうきとう)、全修道士が参加しておこなわれる荘厳ミサ聖祭、連禱など、集団としておこなわれる団体的精神こそがクリュニー修道院の最大の特徴であった」という。

 この修道院は、共同体による神への賛美、壮麗な美の奉献の様相を世に示すことで、混沌とした世界の中で不安におののく俗人たちの憧れとなっていく。

 それ故に、貴族たちによる私的贖罪(しょくざい)行為として財産の修道院に対する寄進が進み、さらには自らと一族の魂の永遠の救済のために修道士と祈禱兄弟盟約を結ぶなどして代禱を願うようになる。

 こうして、クリュニー修道院は、疾病病死の恐れが人々を覆った時代に、世を照らす光となり、慰めを与えるよりどころとなった。

 聖堂は壮麗に彩られ、美しい装飾文字の描かれた典礼書が用いられた。
 人々の死後の安寧を保障するために、神にとりなしを願って詩篇の賛美をささげる修道士らで聖堂は満たされた。
 彼らは、ひたすら祈りに明け、祈りに暮れる生活に生涯をささげていく。

 貴族たちは回心の姿勢を示し、贖罪行為として修道院に多くの寄進をした。
 死の床で修道服を身に着け、修道院墓地に埋葬されること、それもできるだけ祭儀がささげられる聖堂の近くに葬られることを願い求めた。

 「修道院の大家族の一人として、永遠に絶えることなく、いまは亡き人々の救霊を思い、彼らのために永遠に祈り続けるあの精神的家族の一員となるのである。最後の審判の日には、甦(よみがえ)って修道士たちの間に並ぶのである」と歴史家は記している。

【参照】
朝倉文市著『修道院』(講談社、1995年)



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