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宣教師ザビエルの夢 33

 アプリで読む光言社書籍シリーズとして「宣教師ザビエルの夢」を毎週月曜日配信(予定)でお届けします。
 1549年8月15日、鹿児島に一人の男が上陸した。家族や故郷を捨て、海を渡った男が、日本で夢見たものは何か。現代日本に対する彼のメッセージを著者が代弁する!(一部、編集部が加筆・修正)

白石喜宣・著

(光言社・刊『宣教師ザビエルの夢-ユダヤ・キリスト教の伝統と日本-』〈1999429日初版発行〉より)

第三章 キリスト教公認への道のり

一、教父たちが遺した信仰の書

●アンジェラスの鐘の音とともに
 ミレーの描いた農夫たちの姿には、生活に根ざした信仰の香りが漂っています。中でも、夕暮れ時に畑にたたずむ若き夫婦が、一日の仕事を終えて深く頭を垂れながら祈る姿を描いた『晩鐘』は印象的です。しかもこの作品には、懐かしき音があります。日没の祈りの時間を告げる「アンジェラスの鐘(◆注12)」の音が、彼方の教会から響いてくるのです。かつて、ヨーロッパの郊外ではどこにでも見られた風景なのでしょう。日本では長崎郊外の村落で、これに似た光景が見られました。大村や黒崎という町に出向くと、段々畑を耕す村人の中に見ることのできる風景です。

 こうして畑の農夫らが幼いときに覚えた祈りをささげるのと同じころ、教会や修道院では、聖職者や修道者たちが『聖務日課』と呼ばれる祈祷書を開いて、神様への賛美と全人類の救済のための祈りを唱和します。ユダヤの伝統から受け継ぎ、長き修道生活の歴史の中で培われたこの祈りのスタイルは、キリスト教会の生命を養ってきました。

 そこで用いられる「祈祷書」は、詩編を中心とする聖書の中の賛歌をあみ合わせたものです。彼らはこれを唱えることによって、日常生活の中に聖なる時間を持ち込み、それにより生活全体を聖なるものとして神にささげてきました。

 夜明け前の祈りの時間には、祈祷書の祈りに幾つかの読書が加えられています。そこでは聖書の一節を静かに拝読することと併せて、教会の著作家たちの作品を読む習わしがあります。それは「霊的読書」と呼ばれるもので、今日のキリスト者が、先人の信仰の模範から絶えず霊的刺激を受け、彼らとともに生きるためのものです。またそれは、信仰体験に裏打ちされた言葉の奥に隠された英知を差し出しているのです。そして読む者は、その中から神への祈りとキリストへの愛の熱情をくみ取っていくのです。


◆注12:アンジェラスの鐘/天使ガブリエルがマリアに受胎告知したことを記念する「お告げの祈り」を唱える時刻を知らせる鐘。朝夕の6時と正午に鳴る。

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 次回は、「教父たち」をお届けします。


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