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ほぼ5分で読める勝共理論 17
疎外論③
サルが労働によって人間に進化した?

編集部編

人間の本質は労働である?
 これまでに、共産主義の中心には哲学理論があって、さらにその中心に疎外論がある、という話をしました。

 「疎外」とは、人間の本質が失われている状態という意味です。そして共産主義では「人間の本質は労働である」と言っています。今回はその理屈について説明します。

 共産主義では、「人間はサルが労働によって進化した」と言っています。

 大まかに説明すると次のようになります。

 ある時、サルの中に木から降りて歩くものが現れました。彼らは手が自由になりました。
 そしてその手で道具を使うようになりました。これが最初の労働です。

 彼らは道具を使うために、コミュニケーションを必要としました。初めはただの叫び声でしたが、これがやがて言語になりました。
 そして言語を使うことで脳が発達していきました。そして誕生したのが、高い知性を持った人間です。

 ですから、サルと人間の違いは知性の違いにあるのですが、その本質は労働するかどうかにある、すなわち、労働するものは人間となり、労働しなかったものはサルのままである。だから人間の本質は労働である、というわけです。

 共産主義では、哲学の重要なテーマである人間観を、このように科学に基づいて導き出したと言っています。
 この点が他の哲学理論とは違う、他の哲学理論は単なる空想だ、共産主義だけが科学に裏付けられた真理である、というわけです。

 皆さんはどう考えますか。

 もちろん人間にとって労働はとても大切です。では労働が人間の本質なのか、人間とサルとの違いは労働なのか。

 どうなのでしょうか。

共産主義の人間観は非科学的な空論
 実はこの共産主義の人間観には科学的な裏付けは全くありません。むしろ科学に反しています。

 例えば、人間が言葉を話すには発達した脳が必要です。詳しく言うと、大脳新皮質という部分が必要です。
 ここが発達しなければ言葉は話せません。コミュニケーションが必要だから話せるようになって、話しているうちに脳が発達した、というのは順番が逆であって、単なる空想です。

 例えてみれば、自転車のペダルをこぎ続けていたら、速く走る必要が出てきたのでオートバイになっちゃった、というような理屈です。
 自転車を何十万年こいでも自転車は自転車のままですよね。

 オートバイをつくるには正確な設計図が必要です。そしてその設計図どおりに部品を組み立てないと絶対完成しません。
 生命の場合はDNAがこの設計図に当たります。

 「でも長い時間がたてば偶然に設計図ができることもあるんじゃないの?」と思うかたがいるかもしれません。
 そういうかたは、アンドレアス・ワグナーが書いた『進化の謎を数学で解く』という本を一度ご覧ください。

 生命が地球上に誕生してから現在まで約30億年ですが、この期間に高度な生命が偶然に誕生する確率は数学的にはゼロです。
 子供が落書きをしていたら精密なオートバイの設計図ができてしまった、なんていう確率はゼロに等しいですよね。それと同じです。

 精密な設計図があれば、誰か専門家が書いたはずだ、というのが科学的な発想です。 
 つまり共産主義の人間観は非科学的な空論なのです。

 ではなぜ、共産主義は「人間の本質は労働である」と言ったのでしょうか。
 その答えを簡単に言うと、「労働者による暴力革命を正当化するため」です。

 この点については次回、詳しく説明いたします。

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