世界はどこに向かうのか 285
韓国、第三極「改革新党」立ち上げで異例の事態に

2024.02.13 12:00

世界はどこに向かうのか
～情報分析者の視点～

韓国、第三極「改革新党」立ち上げで異例の事態に

渡邊芳雄（国際平和研究所所長）

　今回は、2月5日から11日までを振り返ります。

　この間、以下のような出来事がありました。

　イスラエル軍、人質31人死亡確認（2月6日）。尹錫悦（ユン・ソンニョル）大統領、元徴用工問題解決目指し、「日韓企業が協力を」（7日）。ゼレンスキー大統領、ザルジニー総司令官を解任（8日）。金正恩（キム・ジョンウン）氏演説、「韓国は第一の敵対国」（8日）。韓国、第三極の「改革新党」設立が宣言される（9日）。イスラエル軍、ハマスが国連パレスチナ難民救済事業機関（UNRWA）オフィスを使用の可能性示唆（10日）、などです。

　韓国総選挙は4月10日に行われます。現在、その日に向かう政局は異例の事態となっています。
　2月9日、与野党を離党した国会議員らの四つのグループ代表が国会で記者会見し、「改革新党」の立ち上げを宣言したのです。今後、第三極として無党派層の取り込みを本格化させると見られています。

　与党「国民の力」を昨年離党した党代表を務めたこともある李俊錫（イ・ジュンソク）氏と、野党第一党「共に民主党」を先月離党した元党代表の李洛淵（イ・ナギョン）元首相、両氏が離党後にそれぞれ設立した二つの新党と、共に民主党の李在明（イ・ジェミョン）代表に批判的な議員グループ「原則と常識」など二つの政治グループが合流したのです。

　「改革新党」は李俊錫、李洛淵両氏が共同代表を務めることになりますが、選挙を取り仕切る総括選挙対策委員長には李洛淵氏が任命されました。近く、党大会を開催する予定となっています。

　李俊錫氏は2021年、36歳の若さで「国民の力」の代表に選ばれました。そして20代から30代の男性の支持を集め、尹錫悦大統領の勝利を後押しした功労者でした。
　しかしその後、尹氏の側近と対立し、昨年末に離党してしまったのです。その後新党（「改革新党」）を立ち上げていました。

　去る1月20日、李俊錫氏がソウル市内で新党「改革新党」の結党大会を開催し、同氏が新党の代表に就任しました。
　その時、李洛淵氏がこの結党大会に出席していたのです。李洛淵氏は祝辞で、「時代的な課題のため、私たち皆が協力することを願う」と述べ、両新党の合流を呼びかけていました。この時点では、李俊錫氏は慎重姿勢でした。

　李洛淵氏は1月11日、「共に民主党」を離党しました。その後、新党「新しい未来」の設立に向け、16日に発起人大会を開催しています。

　1月10日には、「共に民主党」の李在明氏に批判的な議員グループ「原則と常識」に属する3議員が離党しており、李洛淵氏との連携を模索する姿勢を示していたのです。
　これらの動きが結集したのが2月9日の「改革新党」結党大会だったのです。

　世論調査会社・韓国ギャラップが1月19日に公表した調査結果によれば、「国民の力」の支持率は36％。2022年7月に李俊錫氏との対立で支持率が急落して以来、一度も40％台に回復していません。
　「共に民主党」は33％、無党派層は26％でした。これらの数字は、国民の二大政党への不満が現れたものです。

　来る総選挙は、現在は第三極である「改革新党」の動向が最も注目されることになるでしょう。異例の事態です。