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ほぼ5分で読める勝共理論 15
疎外論①
共産主義の中心にある「疎外論」

編集部編

 共産主義には政治理論、経済理論、歴史理論、そして哲学理論があります。
 とは言っても、共産主義のこの部分が経済理論、この部分が政治理論とはっきり分かれているわけではありません。

 例えば、カール・マルクスの著作に『資本論』という本があります。これはマルクスが20年以上かけて書いた経済理論です。

 マルクスは全4巻にしようと考えていたのですが、生きている間には1巻しか書けませんでした。
 残りはマルクスが死んだ後に、エンゲルスという友人が編集したものです。

▲カール・マルクス

 実はこの『資本論』は純粋な経済理論ではありません。哲学理論をかなり含んでいます。もちろん政治理論や歴史理論も含んでいます。

 このように、共産主義はさまざまな理論が複雑に絡み合ってできています。
 その中でも、中心的な位置にあるのが哲学理論です。そしてその哲学理論の中でも、さらに中心的な位置にあるのが「疎外論」なのです。

 ところで「疎外」という言葉は、ちょっと分かりにくい言葉ですね。普段からこういう硬い言葉を使う人はあまりいないと思います。

 「あの人は疎外されている」と言えば、「のけ者にされている」という意味になります。
 この言葉が哲学で使われると、「人間があるべき本来の姿、人間の本質を失っている状態」という意味になります。

 できるだけ身近な例で説明してみましょう。
 とてもおしゃべりが好きな人がいるとします。しゃべらないと生きていけない、というような人です。そしてその人に、3日間絶対にしゃべっちゃだめだよ、と言いました。これはかなりつらいですね。その人にとっては存在そのものが否定されているような感じかもしれません。
 次元は違いますが、これが疎外です。

 つまり疎外論では、人間は本来こういう姿である、という「人間らしさ」あるいは「人間の本質」の定義をしています。そして現在の社会は、その「人間らしさ」を奪う社会なのだと説明しています。

 社会制度にちょっと問題があるから修正しないといけない、ということではなく、社会が根本的に間違っている、人間として生きることの意味を奪っている、だから倒さないといけない、ということになるわけです。

 では、共産主義は「人間らしさ」をどう定義しているのか。あるいは現在の社会がなぜその人間らしさを奪っているといえるのか。ここがポイントになってきます。

 そしてここが分かると、やはり共産主義はまずいな、これが広がれば大変なことになってしまうな、ということがよく分かると思います。

 具体的な内容については次回、お伝えします。お楽しみに。

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