2024.02.05 22:00
宣教師ザビエルの夢 27
アプリで読む光言社書籍シリーズとして「宣教師ザビエルの夢」を毎週月曜日配信(予定)でお届けします。
1549年8月15日、鹿児島に一人の男が上陸した。家族や故郷を捨て、海を渡った男が、日本で夢見たものは何か。現代日本に対する彼のメッセージを著者が代弁する!(一部、編集部が加筆・修正)
白石喜宣・著
第二章 キリストと出会った人々
四、使徒の継承者
●使徒教父時代の到来
いつの世にも、世代交代の時期が問題となるのです。聖霊により力づけられ愛の炎をともされた初代キリスト教会においても、その危機は1世紀と2世紀の狭間に訪れたのです。イエスが地上におられるとき直接に教えを受け、復活したキリストと出会い、聖霊降臨の場に臨んだ使徒たちが、あるいは殉教し、あるいは生涯を全うすることによってこの世を去ったとき、一つの時代が終わりました。実感を伴う主の記憶がそこで途絶え、イエス・キリストの全き啓示の時期は、その時終了したと理解されるようになります。そうなってくると、いかにしてキリストの教えと使徒たちの伝統を守っていくかが問題となってきます。そこで活躍するのが、使徒たちに学び使徒たちと共に生活してきた弟子たちであり、使徒の記憶をとどめた文書が貴重な存在となってきたのです。このような指導的立場に立つ者たちを「使徒教父」と呼び、彼らの残した文書が「使徒教父文書」と呼ばれています。そして、1世紀の終わりから2世紀の半ばころまでを「使徒教父時代」というのです。
使徒教父と呼ばれる人物には、ローマのクレメンス、アンチオキアのイグナチウス、スミルナのポリュカルポス、パピアスなどの名前が挙がります。文書としては、『バルナバの手紙』『ヘルメスの牧者』『ディダケー(十二使徒の教訓)』などがあります。
これらの記録を通して、初代教会の人々が、使徒の教えを通して伝えられたイエス・キリストの伝統を保持し、真のキリスト者たらんと心を砕いてきたことがうかがえます。またそのために礼拝や典礼が整えられ、教会の指導者の役割が明確になり、組織が整えられていくようすも見ることができます。
体系的な思想・神学形成がなされるまでには、まだしばらく様々な出来事を経験し、しかるべき人物が登場するまで待たなければなりませんが、この使徒教父と呼ばれる人々は、言葉と行いによって使徒の伝統を次世代に継承するという重要な使命を果たしていくのです。
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次回は、「殉教の道」をお届けします。