2023.12.26 12:00
平和の大道 65
リニア新幹線の適合性
皆さんは、『平和の大道』という書籍をご存じでしょうか。著者は、一般財団法人国際ハイウェイ財団の理事長、佐藤博文氏です。
同書は、国際ハイウェイ財団が推進する「国際ハイウェイ・日韓トンネル」プロジェクトの意義や背景などについて総合的に理解することのできる貴重な一冊です。
Blessed Lifeではその一部を抜粋して紹介してまいります。ぜひお楽しみに!
佐藤 博文・著
中央リニア新幹線が、2027年までに東京・品川から名古屋区間の全線開通という当初の計画を前倒しにするという発表もあり、大きな話題になっている。「日韓トンネルでは、新幹線よりも高速で走るリニア新幹線を通したら良い」と主張する人も多い。しかし、この見解は日韓トンネルに関して言えば、多くの問題があり、現時点では日韓トンネルの通行手段としてふさわしくないという結論になる。
不適合の理由
1. リニア新幹線は、原子力発電による潤沢な電力供給を前提としたものであり、電気代は新幹線の約3倍かかる。今後原子力発電所の再稼働や新設が厳しくなる昨今、リニア新幹線に振り向けるだけの電力の確保が可能かどうか、疑問である。
2. リニア新幹線には変電所が10~15km間隔で必要となる。したがって、250kmを超える長大な海底トンネルである日韓トンネルの中には、20個ほどの変電所を設置する必要がある。ところが、それを設置するだけで、トンネル内の空間や設備が余計に必要になり、工事費もかさみ、それ以上にトンネル内の安全性が大きく阻害されることになる。
海底トンネル内は、「絶対的安全性」の確保が最重要課題である。一番恐ろしいのは発火である。「絶対的安全性」のためには、発火の恐れのある設備や物資を最小限にしなければならない。電気系統の異常による発火、燃焼が一番怖い。機械類、エネルギー源は最小限にしなければならない。したがって、機材を導入するにしても、部品も最小限で、構造もシンプルで安全で扱いやすく、修理しやすい技術からなる機材を導入しなければならない。技術も、高度な技術である必要はない。低い技術で間に合えばその方が良い。
日韓トンネルは新技術の実験場ではない。海底トンネルにとって、リニア新幹線は未だ実験段階の技術である。陸上部のトンネルには応用できるかもしれないが、日韓トンネルのような長大な海底トンネルには不適合であり、特に安全性には問題がある。リニア新幹線にはスピードが速いというメリットはあるが、今のところそれぐらいである。
3. さらに、リニア新幹線は貨物運送に向かない。日韓トンネルの主要な役割は、人間の輸送と貨物の輸送である。経済的には物資の輸送の方がより多くの収入を見込める。しかし、リニアモーターカー様式の輸送システムは物資輸送に不向きである。貨物輸送のことを考えれば、今の新幹線方式よりも、在来線で高速列車を走らせた方が良い。英仏海峡トンネルはこの方式である。
一日生活圏から見て
国際ハイウェイの本来の趣旨から見て、リニア新幹線の適合性の検証をしてみよう。文鮮明(ムン・ソンミョン)総裁は、国際ハイウェイに関して、「一日生活圏」ということを強調されている。
「一日生活圏」とは、高速道路を超ハイスピードで疾走して、24時間で地球を一周することであるというイメージを持っている人が多い。そのためには陸上での移動手段として航空機並みのスピードを出せる乗り物が必要になり、結果的にリニア新幹線のような輸送手段の登場となる。
しかし、「一日生活圏」とはこのような意味ではない。我々は、道路と言えば、すぐ産業用の道路をイメージする傾向が強いが、国際ハイウェイの本来の趣旨は、全く違う。気心の合った仲間と一緒に高速で走れる車に乗り、高速道路を疾走しながら、高速道路近辺の名所・旧跡を観光し、レジャーを楽しみながらゆったりと一日24時間の趣味生活を満喫する。そのような観光主体の道路である。したがって、高速道路内エリアとその周辺エリアが、「生活を楽しむ場」になるという意味の「一日生活圏」である。目的地に到着するために脇目も振らずに高速で突っ走るのではなく、移動の途中を楽しむ、つまり、ハイウェイエリア自体が楽しい生活空間になるというイメージがぴったり合っている。
この意味において、リニア新幹線は、国際ハイウェイ・日韓トンネルにとって絶対的に必須的なものではなく、また全面的に否定するものでもなく、将来の多様な選択肢の一つとして考えておくべきであり、陸上部の輸送手段としては良いとしても、海底トンネルの輸送手段としては今のところ不適合である。
(『友情新聞』2016年11月1日号より)
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次回は、「樺太宗谷岬間海峡トンネル構想」をお届けします。
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