2023.12.05 12:00
世界はどこに向かうのか
~情報分析者の視点~
ヘンリー・キッシンジャー氏が死去
渡邊 芳雄(国際平和研究所所長)
今回は、11月27日から12月3日までを振り返ります。
この間、以下のような出来事がありました。
ロシアで2024年度予算成立、国防費7割増(11月27日)。北朝鮮が非武装地帯11カ所に監視所を再設置、韓国国防省が発表(27日)。米・NATO、ウクライナ支援継続確認(28日)。ヘンリー・キッシンジャー氏が死去(29日)。米国、オスプレイの飛行継続を明言(30日)。イスラエル軍、ハマスと戦闘再開(12月1日)。ロシア、大統領令で総兵力17万人増員(1日)。韓国、初の国産偵察衛星打ち上げ(1日)。香港の活動家・周庭さん、事実上のカナダへの亡命が明らかに(3日)、などです。
国際政治学者、ヘンリー・アルフレッド・キッシンジャー氏が11月29日、コネティカット州の自宅で亡くなりました。100歳でした。キッシンジャー氏は何よりも米中国交に道筋を付けた人として知られています。
習近平国家主席は30日、バイデン大統領に弔電を送りました。習氏は「深い哀悼の意」を表明し、「中米関係の正常化に歴史的な貢献を果たした」と功績をたたえたのです。
キッシンジャー氏は1970年代の米外交を主導し、米中関係の正常化やベトナム戦争の終結で大きな役割を果たしました。1973年にはノーベル平和賞も受賞しています。
キッシンジャー氏は1923年、ドイツでユダヤ人の家系に生まれました。ナチス・ドイツの迫害を逃れるため、1938年に渡米。1943年に帰化しています。ハーバード大学で欧州外交史を学び、1954年に同大大学院を修了しました。その後、同大学の教授に就任しています。
1969年、ニクソン大統領に請われて国家安全保障担当大統領補佐官となり、1971年に国交のなかった中国を極秘訪問。1972年のニクソン氏の電撃訪中を実現させています。
キッシンジャー氏は「外交の達人」、現実路線の人といわれます。
東西冷戦下の中ソ対立を捉えて、敵対していた毛沢東に接近して歴史的な米中和解を実現させたのです。
さらに、台湾駐留米軍の撤退とベトナム戦争収拾をリンクさせて「パリ和平協定」に持ち込みました。同時に米ソ間の緊張緩和を進めています。
キッシンジャー路線は、地政学的見地からの勢力均衡による国益追求を最優先する現実主義(リアル・ポリティクス)です。
その半面、力の均衡を重視するあまり、米国の根幹的価値観である人権や民主主義を軽視し過ぎたとする批判もありました。
結局、冷戦を西側の勝利に導いたのは、軍事力増強と同時に、民主主義と自由主義経済という米国の「灯火(ともしび)」を掲げてソ連に対抗したレーガン政権だったことは、キッシンジャー外交の限界を示したともいえます。
キッシンジャー氏は今年の7月、北京を訪問し、習近平国家主席と会談しています。
習主席は「中国人民は決して旧友を忘れることはない。中米関係は常にヘンリー・キッシンジャー氏の名前に結び付くだろう」と述べています。
キッシンジャー氏は、王毅政治局員(現外相)、李尚福国防相(当時)とも会談しています。
最後の訪問との覚悟で、キッシンジャー氏は習氏に何を伝えたのでしょうか。
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