世界はどこに向かうのか
~情報分析者の視点~

北朝鮮のロケット弾、ウクライナやイスラエル北部で発見

渡邊 芳雄(国際平和研究所所長)

 今回は、1030日から115日までを振り返ります。

 この間、以下のような出来事がありました。

 北朝鮮、在香港の総領事館を閉鎖(111日)。韓国国情院、北朝鮮がロシアに弾薬100万発以上提供と国会で報告(1日)。李克強前首相の告別式行われる(2日)。イスラエル軍、ヒズボラと交戦(4日)。イランとハマス、最高指導者会談をしたと発表(5日)、などです。

 ここにきて、中国、ロシア、北朝鮮、そしてイランの「枢軸」の結束が明らかになってきました。欧米中心の国際秩序に対して挑戦する中心的国家群です。

 韓国軍は最近、「パン-122」というハングルと数字が刻まれた122ミリロケット弾が、イスラエル北部国境地域で発見されたことを明らかにしました。
 ハマスかヒズボラが使用したのではとの見方を示しています。

 「パン-122」の表記のある砲弾はまた、ウクライナ東部のロシアとの激戦地でも、ウクライナ軍が使っていたことが分かっています。
 ロシア軍から押収したものだというのです。北朝鮮のロケット弾の存在が目立ち始めました。

 韓国の国家情報院(国情院)は111日、ウクライナ侵略を続けるロシアに対し、北朝鮮が弾薬を提供したとの分析を国会情報委員会で報告。北朝鮮は、ロシアの船舶と輸送機を使用し、8月以降各種兵器を10回以上輸送。中身は約100万発の弾薬で、ロシアは「2カ月以上の戦闘が可能になった」との見方を示したのです。

 国情院はまた、イスラエルとの戦闘が激化するイスラム原理主義組織ハマスに対する支援策を金正恩(キム・ジョンウン)氏が探るよう指示したとの分析も明らかにしました。
 かつて北朝鮮がハマス側にロケット砲弾を輸出した前例があることから、「武装集団に武器を売る可能性がある」と分析しているのです。

 一方、10月に入って北朝鮮在外公館の閉鎖が相次いでいます。
 国連中心の制裁強化で、在外公館を拠点とする活動が困難になったことが背景にあると見られます。

 これまで北朝鮮は、外貨獲得の拠点として在外公館を活用していました。所属する外交官が外交特権を使って密輸を行ったり武器輸出の支援を行ったりするなど外貨稼ぎを行っていたのです。

 10月中旬、北朝鮮は香港総領事館の閉鎖を中国側に通知。1030日には北朝鮮が国営メディアを通じてアフリカのウガンダとアンゴラ大使が両国の大統領に離任のあいさつをしたと発表。さらにスペイン大使館の閉鎖方針も明らかになっています。

 113日、北朝鮮外務省は同省報道官のコメントをホームページで公表し、「変化する国際環境と外交政策により(在外公館の)撤収と新設を進めている」と述べています。

 韓国統一省によれば、10月現在、北朝鮮が運営する大使館や領事館などの在外公館は各国に53カ所ありましたが、今回の閉鎖で49カ所に減ることになります。

 北朝鮮の元駐英公使で韓国の国会議員である太永浩(テ・ヨンホ)氏は112日、ソウル市内で記者会見し、これはロシアとの協力関係も影響しているとして「北朝鮮はロシア、中国との関係強化で生き残れると判断したようだ」との見解を示しています。

 今後の北朝鮮の動向を注視しなければなりません。



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