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シリーズ・「宗教」を読み解く 290
キリスト教と日本(69)
福音の伝播よりも政治闘争へ

ナビゲーター:石丸 志信

 戦後、キリスト者の間に平和運動が起こり、1951年には「キリスト者平和の会」が結成され、戦争反対、平和憲法護持、平和国家建設を訴えた。

 各地で起こった平和団体の連携のため、19523月には基督教平和団体協議会が結成され、教会への働きかけや他団体との協力などを探った。

 1950年の朝鮮戦争の勃発を契機に、日本基督教団も平和に関する声明を出すなど、平和問題に関心を払うようになった。
 当初は、神の力による平和の到来を信じ、世界的な共同体としての教会の使命を強調していた。

 しかし、1954年の米国の原水爆実験で日本の漁船が被ばくしたことを契機に、教団のみならず諸教派がこぞって原水爆禁止の声を上げるようになる。
 さらに1960年に入り、安全保障条約改定の問題を取り上げ、信仰的決断として、これに反対することを公表した。

 安保改定に反対するキリスト者の会が東京で開かれ、街頭デモを行った。
 その後、キリスト教関係者は安保改定阻止国民会議の統一行動に参加していく。

 戦前、政府の統制下にあって自由に発言できなかった反動で、キリスト者たちも社会問題や政治の情勢にも積極的に声を上げるようになった。

 本来は、キリスト教精神に基づく平和実現が理想であった。しかし現実には、共産主義思想に基づいて活動する革新勢力と連携するようになっていった。

 60年安保闘争後は、これまで平和運動に参画していた人々が日本基督教団でも重要な役割を果たす立場に立つようになると、教団の体質改善を唱え、より積極的に平和運動に関わるようになった。

 キリスト教会が取り組むべき社会活動の基本方針が公にされると、次第に福音の伝播(でんぱ)よりもむしろ政治闘争的色合いを強めていくことになる。

【参照】
『日本プロテスタント・キリスト教史』(土肥昭夫著、新教出版社 1980



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