2023.10.19 05:00
スマホで立ち読み Vol.28
『拉致監禁』25
世界平和統一家庭連合 総務局/編
スマホで立ち読み第28弾、『拉致監禁』を毎日朝5時にお届けします。
本書は現在の報道の背景を理解するとともに、拉致監禁の再発を防ぐために作成された一冊です。ぜひお読みください。
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第二章 痛哭と絶望を超えて
警察庁長官に訴えるも届かず——夫と、当時1歳半の長女を拉致され、家族が引き裂かれたTさんの苦悩①
平成11年(1999年)11月13日、都内に住むSさん(当時32歳)が当時1歳半の長女と一緒に、埼玉県の実家に日帰りの予定で帰ったが、その後、半年たっても彼は自宅に戻るどころか、妻のTさんに電話一つかけてこなかった。
Sさんの「失踪」に、夫の実家が関与していることははっきりしている。Sさんの両親は、Sさん夫婦が家庭連合(旧統一教会)の国際合同祝福式に参加し、結婚したことに強く反対していた。妻は婚約中、実家の敷居をまたぐことさえ許してもらえなかった。長女が生まれたことで、両親の態度は幾分和らいだが、それでも実家には上げてもらえなかったという。
平成11年10月半ば。Sさんが実家に、教会が発行した冊子を送ったところ、母親から電話が入った。「小冊子を見たが、分からないところがある。今度、家に来て直接説明してくれないか」
少しでも両親の理解を得たいと考えていたSさんは、11月13日に行くと告げ、実際に実家に向かったのである。その夜、夫が帰宅しないので、妻のTさんは何度も埼玉の実家に電話を入れた。だが、誰も受話器を取らない。妊娠中で体がきつかったため、知人に頼み、車で実家まで乗せてもらった。前日は「家族全員がそろう」と言っていたのに、家の雨戸まで締め切られていた。その日の夕刊も、ポストに入れられたままだった。
深夜、夫の父親から電話が入った。「(Sと)話し合いの場を持っている」と言う。
Tさんは、夫の手帳に11月14日以降の仕事の予定が既に書かれていることを指摘し、「話し合いは、夫が承知していたものではない」と反論する。
Tさんはすぐに動いた。15日には警察署を訪ね、夫と娘の「捜索願」を出した。職場にも連絡を入れ、何か動きがあれば教えてほしいと頼んだ。夫の父親にも、内容証明郵便を送付した。
「自分は妊娠6カ月で夫の助けなしで生活することは困難です。夫はストレスに弱く、神経が細かいため時折胸の痛みを訴え通院していた経緯もあり、こうした症状が再発する虞(おそれ)があります。娘は風邪をひき病院に通っています。一刻も早く、夫と娘を解放するように要請します」
夫と娘の衣類や薬、ぬいぐるみなどを実家に送った。実家にいつの間にか付けられた留守番電話に、メッセージを吹き込んだ。「夫と娘を早く返してください!」
失踪から2週間後、義父から「この話し合いは簡単には終わらない」という速達が届く。どこにいて、いつ帰れるのか。Tさんが知りたいことは何も書かれていなかった。
その頃のTさんの精神状態は、どんなものだったのだろうか。
「言葉では言えない、言葉にはならないものだった」とTさん。電車に乗ると、この電車で夫と娘が実家に帰ったのか、と思いが湧き、自然に涙があふれた。長女のことを思い出してしまうので、小さな子供の姿を見ることさえできなかった。
夫と娘が拉致されて40日が過ぎた。街はクリスマスのにぎやかなムードに満ちていた。しかし、Tさんの心は沈んでいて、手紙を書けば、それはいつの間にか“遺書”になってしまった。
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次回は、「いつか帰ってくると信じている」をお届けします。
★「我々の視点」脱会説得による悲劇①
★「拉致監禁」問題を考える特別シンポジウム(2023年9月10日)ダイジェスト映像