2023.09.26 12:00
平和の大道 52
日韓トンネルの必要性の検証①
皆さんは、『平和の大道』という書籍をご存じでしょうか。著者は、一般財団法人国際ハイウェイ財団の理事長、佐藤博文氏です。
同書は、国際ハイウェイ財団が推進する「国際ハイウェイ・日韓トンネル」プロジェクトの意義や背景などについて総合的に理解することのできる貴重な一冊です。
Blessed Lifeではその一部を抜粋して紹介してまいります。ぜひお楽しみに!
佐藤 博文・著
国際ハイウェイプロジェクト全般ではテーマが大きすぎるので、ここではその一環である日韓トンネルプロジェクトに絞って、その必要性に関して、次に挙げる三つの観点から「必要性」の程度を検証することにする。
一つ目は、「長期的か、短期的かという時間軸」の観点から見た必要性の検証である。二つ目は、「広域的か、狭域的かという空間軸」の観点から見た必要性の検証である。三つ目は、「経済・政治・文化等の人間の活動分野」の観点から見た必要性の検証である。
時間軸からの検証
まず、時間軸で見てみよう。一般的に言って、短期は数年から5年先、中期は5年から20年先、長期は20年から50年、100年先のことを指す。日韓トンネルは、現時点の最新技術を使ってなしても、トンネル建設工事だけでも最速で10年はかかる。日韓両国政府合意の決定、研究・調査、予算の確定等を含めれば、トンネル貫通まで最速で20年はかかると見て良い。英仏海峡トンネルが発案されてから約200年かかったことを考えれば、順調に行っても今から30年、40年はかかるだろう。
そのようであれば、少なくとも20年先の情勢を予測(または想像)した上で、必要であるかどうかの検証をしなければならない。20年先の世界は、今以上にグローバル化し、交通も情報も国境を超えて交流しているであろう。特に、東アジア、その中でも北東アジアの経済は大きく発展していることが予想される。北東アジアに限ってみても、この地域で「北東アジア共同体」というEU(欧州連合)のような共同体の形成の動きが本格化していることも十分予想される。そのようになれば、日本列島と韓半島を連結する日韓トンネルの必要性は間違いなく高くなる。しかし、5年から10年のタイムスパンで考えれば、必要性は極めて低い。ゆえに日韓トンネルは、長期的視点に立った未来創造型プロジェクトであると言えよう。
空間軸からの検証
次は、日韓トンネルが影響する地理上の広がりに関しての必要性の検証である。その地理上の範囲を、狭域から広域に展開してみると、①地域(日本の九州・中四国地方、韓国南部地域)、②国家(日本、韓国)、③広域圏(北東アジア、極東、シベリア)、④大陸(アジア大陸、ヨーロッパ大陸)、⑤世界となる。
①の範囲で考えると、九州・中四国地方、韓半島南部地域にはメリットがあるものの、人的、物的交流が限られ、建設コストに見合う収益が見込めず、必要性は極めて低い。
②の日本と韓国両国で見れば、人的交流と物流において、膨大な建設費をかけてまでなすにはかなり無理がある。したがって、日韓トンネル建設の必要性はかなり低いと言える。
③の広域圏、例えば、日本、韓国、北朝鮮、中国東北部からなる「北東アジア圏」の枠で考えれば、大量の人的交流と物流が見込まれ、建設コストの回収が可能となるので、「北東アジア圏」という範囲に至って初めて日韓トンネルの必要性が高くなる。英仏海峡トンネルが完成を見るに至った背景には、総人口約5億人のEU(欧州連合)形成という前提があったためである。
④と⑤に至っては、人の交流と物流はさらに拡大するため、必要性は明確であり、必要性を検討するまでもない。
日韓トンネルの必要性を空間軸で検証してみれば、数カ国の範囲を少なくとも超え「北東アジア」以上の領域があって初めて、その必要性が認められる。
日本と韓国の両国だけでは必要性は低い。したがって、日韓トンネルは、空間軸で見れば、北東アジア以上の領域をカバーしてこそ、その十分な必要性が認められるのである。
以上のことから、次の結論が導き出される。日韓トンネルプロジェクトは、国家間(日本と韓国)レベル以上で、少なくとも数十年先の未来創造型プロジェクトであり、究極的には世界平和と新文明創造次元のプロジェクトであると言うことができる。故に、国際ハイウェイ、日韓トンネルを推進する母体となる団体や組織は、長期的な展望を持った公益的で国家の枠を超えた世界的な組織や団体でなければならないと言えよう。
「経済・政治・文化等の人間の活動分野」の観点から見た必要性の検証は、テーマそのものが、多岐にわたり複雑な問題を含むため、次回で詳しく論じることにする。
(『友情新聞』2015年10月1日号より)
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次回は、「日韓トンネルの必要性の検証➁」をお届けします。
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