2023.10.03 12:00
平和の大道 53
日韓トンネルの必要性の検証➁
皆さんは、『平和の大道』という書籍をご存じでしょうか。著者は、一般財団法人国際ハイウェイ財団の理事長、佐藤博文氏です。
同書は、国際ハイウェイ財団が推進する「国際ハイウェイ・日韓トンネル」プロジェクトの意義や背景などについて総合的に理解することのできる貴重な一冊です。
Blessed Lifeではその一部を抜粋して紹介してまいります。ぜひお楽しみに!
佐藤 博文・著
今回から、経済面、政治・安全保障面、文化面という人間社会の活動分野から見た必要性の検証に入る。現実生活を人間の活動分野から見れば、経済、政治・安全保障、文化・宗教等の分野に分けられる。それらは社会生活においては全体として一体のものであるが、それぞれの立場、観点があるため、必要性に関して違いが生じることは当然である。
ここではその違いを分析しながら、色々な観点から、日韓トンネル建設の必要性を総合的に検討することにした。最初に経済面から見てみよう。
経済面から見て
国際ハイウェイ・日韓トンネルの必要性について、最も現実的で直接的に関係する側面は、経済性の検証から見た必要性である。日韓トンネル建設に関する質問は、肯定論が少なく、その大半は「日韓トンネル建設それ自体は、人類の夢を実現する良いプロジェクトの一つであることは分かるが、何兆円にも昇る膨大な投資に見合うだけの経済効果があるのか。日本と韓国の経済にとって本当に必要であるのか、税金の無駄遣いとなり、実用性の乏しい無用の長物になりはしないか。必要であると言うなら、その根拠は何かはっきりと示してほしい」という慎重論、危惧論である。
結論的に言うと、運送量次第である。経済面から見た必要性は、運送量(人流と物流)の多寡で決まる。運送量が増大し投資額に見合うだけの便益・利益が見込まれれば、経済的必要性に関しては何の問題もない。
ところが、現時点での経済効果の試算では、B/C(Bはベネフィット、つまり恩恵・利益・効果、Cはコスト、つまり費用のこと)、つまりBをCで割った数値は1.0以下、厳密に言えば0.5以下であり、費用・投資以上の便益・利益は見込まれず、純粋に金銭的観点だけから見れば、日韓トンネル建設の必要性は極めて少ないということになる。このことが、現時点で建設着工を決断する行動を起こしにくい大きな要因となっている。
はっきりと言えば、投資に見合う利益がでない訳であるから、投資家にとっては現時点では魅力ある投資対象にはならないということである。政府の公共工事であったとしても建設着工に二の足を踏むプロジェクトであることは否めない。
仮に、近い将来北東アジアの経済が大きく発展して運送量が飛躍的に増大するようになれば、B/Cが1.0以上になる可能性が生まれてくる。そのようになれば、その時点で必要性に反対する者はほとんどいないであろう。世界的な投資家達はすぐにでも行動を起こしてくるであろう。
しかし、経済発展の予測は要因が複雑に絡み合っているため簡単ではない。近い将来に北東アジアが経済的に大きく発展するという見込みと保証は今のところどこにもない。「北東アジア共同体」が現実のものとして実現しそうであるという確実な見込みが見えてくれば、北東アジアの経済発展が見込める。つまり、日韓トンネル建設着工の決断は「北東アジア共同体」の実現が見込まれるかどうかということにかかっていると言える。
このように考えると、日韓トンネル建設着工決定に現時点で踏み切るかどうかということの判断は、現時点での客観的で明確な数値計算に基づく判断基準がある訳ではなく、日韓両国及び北東アジア地域が世界情勢の構造的変化や文明の発展の趨勢の中で、将来大きく発展し、この地域の経済も大きく拡大するに違いないと「予測」して「決断」する以外にないということになる。
定量的、客観的な数値計算に基づいてなされる経済面から見た必要性の検証という問題も、究極のところ、「予測」と「決断」という主観的なものに大きく関わっていると言える。
政治面・安全保障面から見て
政治・安全保障の分野は、経済の分野と異なり、経済性を多少無視しても判断することができる。国家の生存がかかるようになれば、多少コストがかかるとしても、B/Cが1.0以下であっても十分クリアできる。軍事費と同じように、経済性を超えたコスト負担も容認される余地が生まれてくる。
一例を挙げれば、現時点で、中国の安全保障面での脅威が現実的に高まっており、放置する訳にはいかない状況である。そのためには日韓における国家レベルでの緊密で重層的な連携が早急に必要である。
日韓トンネル建設は、「日韓両国一体化促進のシンボル」ともなり得るし、その要請を十分に満たす内容がある。また、政治、特に安全保障の面から見れば、現時点においても、日韓トンネルの必要性は十分にあり、日韓両政府が日韓トンネル建設を政治課題として取り上げることも十分に可能である。
(『友情新聞』2015年11月1日号より)
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次回は、「文化や歴史面から見た必要性」をお届けします。
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