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世界はどこに向かうのか
~情報分析者の視点~

北朝鮮・ロシア首脳会談の狙いとは

渡邊 芳雄(国際平和研究所所長)

 今回は、911日から17日までを振り返ります。

 この間、以下のような出来事がありました。

 金正恩(キム・ジョンウン)総書記の列車がロシアに到着(12日)。米下院、バイデン大統領の弾劾審査へ(12日)。北朝鮮、ロシア首脳会談(13日)。英政府、中国のスパイ活動非難(14日)。習主席、カンボジア首相らと会談(15日)、などです。

 917日、金正恩・朝鮮労働党総書記の約1週間にわたるロシア訪問が終わり帰国の途に就きました。
 前日16日には、ロシアのショイグ国防相と会談し、「国防分野の戦略・戦術的協調の強化に向け意見交換」を行ったといいます。

 世界が注目した金正恩氏の動きについて、総括的に見ておきます。
 金正恩氏は10日に平壌を出発。12日にはロシアに入り6日間にわたり極東地域に滞在しました。

 コロナパンデミックが広がった2020年以降、北朝鮮は国境を封鎖して対策に専念しています。それ故、金正恩氏が出国するのは2020年以降初めてとなります。結果として、本格的な外交をロシア訪問で再開させたことになりました。

 ロシア側の「厚遇」ぶりを追ってみることにします。
 13日、極東の国際会議(9月10日13日に開催された東方経済フォーラム)を終えたプーチン大統領がアムール州ボストーチヌイ宇宙基地に移動し、そこで金正恩氏を待ち構えたのです。宇宙基地はプーチン氏自身が案内するという熱の入れようでした。

 北朝鮮側は一連の訪問で、軍事大国ロシアの技術を研究する機会を得ました。ハバロフスク地方の航空機工場で最新鋭戦闘機「スホイ57」を視察し、ウラジオストクでも戦闘機から発射する極超音速ミサイル「キンジャール」について説明を受けました。

 同行団には軍の幹部の他ミサイル開発の重要人物として知られる朝鮮労働党の金正植(キム・ジョンシク)軍事工業部副部長らの姿があったことも確認されています。
 高度な技術を要する衛星や新型ミサイル、海軍戦力の強化に今回の視察結果を生かす可能性もあります。日米韓にとっては大きな「脅威」です。それを前提に安全保障態勢を整える必要があるでしょう。

 ロシア側にとっての「利益」は武器弾薬の協力の具体化につながるということです。
 ロシアがこのようにして北朝鮮と接近したことは、ウクライナ侵略完遂の決意を内外に示すことになるでしょう。

 北朝鮮はロシア軍が使用可能な砲弾を多く所有していますが、古くて不発弾も多いと見られます。それでもロシアが北朝鮮に接近して兵器供与の交渉を行うのは、ウクライナに押されている現在の戦局にあっても、戦勝にこだわるプーチン氏の強い意志が表れているのです。

 何よりもプーチン氏にとって来年3月の大統領選が全てといってもいいでしょう。敗北は「死」であり、国内の混乱も必至でしょう。一方、再選されたらさらなる動員をかけて兵員を増強する可能性もあります。そのための準備ともいえる首脳会談なのです。

 ロシアは今後、中国も巻き込んで3国で米欧に対抗したい考えがあることは明らかです。しかし正恩氏とプーチン氏はこれまで2019年に一度会っただけであることを思うと、信頼関係は希薄と言わなければなりません。
 首脳会談が一定の成果をもたらすか否かは分かりません。注目していきましょう。



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