2023.07.05 17:00
世界はどこに向かうのか
~情報分析者の視点~
ワグネルの反乱、ロシア軍内部の大粛清につながる
渡邊 芳雄(国際平和研究所所長)
今回は、6月26日から7月2日までを振り返ります。
この間、以下のような出来事がありました。
ベラルーシのルカシェンコ大統領、反乱停止へ説得(27日)。中国とニュージーランド、協力協定に調印、貿易強化へ(28日)。ロシア軍・副司令官セルゲイ・スロビキン上級大将が拘束される(29日)。米最高裁の人種優遇「違憲」判断にバイデン氏が反対表明「多様性守る道必要」(29日)。同性婚のウェブサイト制作、米連邦最高裁が「拒否表明の権利」認める判断(30日)。日朝6月に複数回接触か、韓国報道(7月3日)、などです。
ロシアの民間軍事会社「ワグネル」の反乱のニュースが世界を駆け巡りました。
「ワグネル」は、ロシア実業家エフゲニー・プリゴジン氏がロシア軍参謀本部情報総局(GRU)の元高官と共に2013年ごろに創設しました。
2014年に起きたウクライナ東部での紛争に参加しています。その後、内戦下のシリアなどの中東・アフリカ諸国にも要員を送り、活動範囲を拡大していました。
ウクライナ侵略では、受刑者を戦闘員として送るなど、約5万人を戦闘地域に派遣しているといわれています。
その「ワグネル」創設者プリゴジン氏が6月23日夜、SNSで戦闘員らに「正義の行進」と称する決起を呼びかけました。
翌24日午前、プリゴジン氏はロストフ州の州都ロストフ・ナ・ドヌーにある軍南部軍管区司令部などの制圧を宣言。部隊はボロネジ州でロシア軍と交戦し、首都モスクワを目指して進軍したのです。
プーチン大統領は同日、緊急のテレビ演説を行い、プリゴジン氏の行為を「裏切り」と糾弾し「必ず罰する」と発言しました。
しかし午後になり、ベラルーシのルカシェンコ大統領が仲介交渉に入り、プリゴジン氏と流血回避で合意。プリゴジン氏はSNSでモスクワ進軍停止を命じたと表明したのです。
ロシア大統領補佐官は、プリゴジン氏に対する捜査を中止すると明言し、プーチン氏の前言を撤回しました。
その後、ワグネル部隊がロシア軍南部軍管区司令部から撤収を開始しました。プリゴジン氏はベラルーシにいると見られます。
事件の背景と今後の影響について説明します。
反乱の背景にあったのは、ロシア国防省とワグネルの対立です。以前から弾薬供給問題などを巡りプリゴジン氏はショイグ国防相らを批判していました。特に6月上旬のロシア国防省の決定はワグネルを解体するための「陰謀」だったとプリゴジン氏は指摘します。
戦闘員のほぼ全員がロシア軍との契約締結(期限を7月1日に設定)をするようにとの決定でした。ロシア軍の下に全員を入らせようとするのではとの不信感が増幅していました。
そして23日夜、ロシア軍が放ったミサイルがワグネル宿営地に着弾し約30人が殺害されたのです。
決起の行動はここから始まりました。
反乱はプリゴジン氏の事実上の国外追放で決着しました。しかしこの一件がプーチン大統領の権威に深い傷を負わせたことは確かです。
侵略を続けるウクライナでの戦争に影響を及ぼすことは必至であり、ウクライナ政府内からは「プーチンを無力化したようなもの」(ポドリャク大統領府長官顧問)との声も上がっています。
英誌フィナンシャル・タイムズは6月29日、ワグネル反乱に絡み、ロシアのウクライナ侵略で副司令官を務めるセルゲイ・スロビキン上級大将が拘束されたと報じました。
セルゲイ・スロビキン氏はプリゴジン氏と近い存在で、反乱計画を事前に知っていたとされています。
今年1月まで、侵略作戦の総司令官だった人物であり、セルゲイ・ショイグ国防相とは緊張関係にありました。
ロシアの有力な軍事SNS「Rybar」は6月28日にロシア軍内部で「大規模粛清が行われている」と指摘しています。
来年3月のプーチン氏の大統領選への出馬は既定路線でなくなりつつあります。
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