2023.07.11 12:00
世界はどこに向かうのか
~情報分析者の視点~
IAEA報告書~福島第一原発「処理水、安全基準に合致」
渡邊 芳雄(国際平和研究所所長)
今回は、7月3日から9日までを振り返ります。
この間、以下のような出来事がありました。
日本政府、IAEA(国際原子力機関)の福島第一原発「処理水」に関する包括報告書を受け取る(4日)。中国、IAEAの報告公表に遺憾の意(4日)。上海協力機構にイラン正式加盟(4日)。韓国政府、IAEAの報告書を「尊重」(5日)。米、ウクライナへのクラスター弾の供与を発表(7日)、などです。
岸田首相は7月4日、IAEAのラファエル・グロッシ事務局長と官邸で会談し、東京電力(東電)福島第一原子力発電所の「処理水」を巡り、海洋放出の安全性に対する評価を含む「包括報告書」を受け取りました。
IAEAとは、原子力の軍事利用を防止して平和利用を促進することを目的に、1957年に設置された国連の関連機関で、2023年1月時点で日欧米や中国など176カ国が加盟しています。
日本政府は2021年4月、処理水を海洋放出する方針を決定し、IAEAに安全性に関する調査を要請したのです。
IAEAは、中国や韓国を含む11カ国の専門家らでつくる調査団を日本に派遣し、現地調査などを進めてきました。
7月4日、IAEAは報告書を公表しました。その内容は、「国際的な安全基準に合致している」と放出の妥当性を認めたものになっています。これを踏まえて首相は「夏ごろ」とする放出時期を最終判断する方針です。
東電の計画では、処理水は大量の海水で100倍以上に薄め、トリチウム(三重水素)濃度を国の排出基準の40分の1未満にし、その上で、沖合1キロメートルの海底トンネルの先端から放出するというもの。その期間は、30年程度に及ぶ予定となっています。
韓国政府は7日、政府検証を行い、「処理水、悪影響なし」との報告書を公表しました。
日本の計画は国際的な基準を満たすものであり、韓国周辺の海域に悪影響を及ぼさないと結論付けたのです。
韓国の専門機関による想定実験では、海洋放出された処理水は4~5年後に韓国周辺に到達します。
10年後でも、トリチウム濃度は昨年時点の数値の10万分の1未満にとどまるとしています。
グロッシ事務局長は日本に続いて韓国を訪問しました。
野党「共に民主党」が激しい反対行動を行っていることを踏まえ、少しでも理解を広げたいという狙いがあったのです。
ところが、「滞在中に起こった出来事は国として恥ずかしいことばかり」(朝鮮日報7月10日付)という状態だったのです。
事務局長を乗せた航空機が7日夜に金浦空港に到着しましたが、一行が空港を出たのは2時間が過ぎた後でした。
反対するデモ隊に道を塞がれたためです。翌日、朴振(パク・チン)外相と会談した時も、韓国外交部公館前で激しいデモが行われました。
9日午前には、「共に民主党」の招きで国会を訪問し意見交換を行ったのですが、同党執行部から過激な抗議の声を聞かされたのです。
IAEAは安全性の検証のために韓国の専門家も分析に参加させています。反対するのであればそれなりの根拠が必要となりますが、提示されていません。
今回のIAEAによる検証結果を受け入れないのは、北朝鮮、中国、そして韓国の「共に民主党」だけです。
放流水が韓国よりも先に到達するはずのカナダ、米国、ニュージーランド、オーストラリアなどの政府機関は、いずれも「危険なレベルにははるかに及ばない」「汚染の証拠はない」とコメントしているのです。
朝鮮日報は7月10日、社説で「国が正常に運営されるには理性と常識、科学が通じる社会にならなければならない。IAEA事務局長への常識はずれの態度を目の当たりにした国際社会も同じように感じたはず」と結んでいます。
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