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ダーウィニズムを超えて 13

 アプリで読む光言社書籍シリーズとして「ダーウィニズムを超えて」を毎週日曜日配信(予定)でお届けします。
 生物学にとどまらず、社会問題、政治問題などさまざまな分野に大きな影響を与えてきた進化論。現代の自然科学も、神の創造や目的論を排除することによって混迷を深めています。
 そんな科学時代に新しい神観を提示し、科学の統一を目指します。

統一思想研究院 小山田秀生・監修/大谷明史・著

(光言社・刊『ダーウィニズムを超えて科学の統一をめざして』〈2018520日初版発行〉より)

第一章 進化論を超えて
新創造論の提唱

(七)男と女(アダムとエバ)

◯進化論
 生物はなぜ無性生殖から有性生殖(おしべとめしべ、雄と雌、男と女)になったのであろうか。その問題に対して、いろいろと議論がなされているが、明確な理由は不明である。

◯創造論
 神は自分のかたちに人間を創造し、男と女に創造された。つまり神は男性的な要素と女性的な要素をもっておられて、それを分立して、男と女が造られたのである。

◯新創造論
 神は陽性と陰性の二性性相の中和体である。そのような陽性と陰性の二性性相を分立して、陽性実体と陰性実体としての男と女、雄と雌、おしべとめしべをもつ植物が創造されたのである。これを被造世界のペア・システムという。神がペア・システムの世界を創造されたのは、被造世界に愛と美を展開するためであった。

 なぜ、生物にオスとメスという性が出現したのであろうか。すでに述べたように、この問題は現代の生物学においても、大きな謎とされている。それに対して、最も有力な説は「赤の女王仮説」であるという。ルイス・キャロルの『鏡の国のアリス』の中に出てくる「赤の女王」は、いつも走り続けていないと同じ場所にとどまれない。つまり、静止していると存在できないのである。生物も絶えず変化していないと、存在を維持することが困難である。すなわち、ウイルス等の寄生者に対抗して、自分の子孫を生存させていくためには、遺伝子の構成を絶えず変化させなくてはならないのである。無性生殖の場合、子孫は親と全く同じものであるから、一つの寄生者にやられると全滅してしまう。ところが、有性生殖の場合は、絶えず子孫の遺伝子が変化していくので、寄生者に対抗できるのである。これは「性は多様性の創造にある」という主張である。

 もう一つの見解は「性は遺伝子の保存のために存在する」という主張である。進化生物学者のリチャード・ミコッド(Richard E. Michod)は次のように述べている。

 性は損傷や突然変異などの生命を脅かす多くの遺伝子エラーに打ち勝つ。そして、そうすることでDNA分子は完全になる。性は遺伝子の健全さを維持し、その永遠性を通じて生命の存続と不死を可能にするのである(*36)。

 これらは有性生殖のもつ有利な条件ではある。しかしサイエンス・ライターの西村尚子が述べているように、これでは性が現れた理由の説明にはならないのである。

 なぜこの世に男と女が存在しているのか──。これが「性をめぐる第一のミステリー」だ。おそらく有史以来、私たち人間が抱き続けてきた疑問である。……しかし、これらはあくまでも、性の存在意識をあとから理由づけした理論にすぎない。実際にどのようにしてオスとメスが地球上に現れたのか、という疑問は相変わらず残っている(*37)。

 統一思想の観点から言えば、有性生殖の本質的な意義は愛のためにある。すなわち、神は愛の完成を目指して男と女を創造された。動物のオスとメス、植物のオシベとメシベ、鉱物の陽イオンと陰イオンも、やはり愛を表現するものとして造られた。神はそのようなペア・システムを通じて、次第に愛を高めながら被造世界を創造されたのである。したがって、創造の過程はアダムとエバによる愛の完成を目指した「愛の前進」であった。愛と美は一体となっている。したがって、愛の創造は美の創造でもある。神は被造世界を次第に愛らしく、美しくなるように、創造されたのである。

 生物はペアで造られており、同じ種の中でのペアでしか交配できない。たとえ異なる種の間で子が生まれたとしても、それは生殖不可能であって、結局、異なる種同士では交雜は不可能なのである。そのことを「愛の門」があるという。したがって、一つの個体だけが新しい段階に進化したとしても、新しい種として存在することはできないのである。オスとメスのペアが、共に新しい段階に高められなくてはならない。つまり、生物はペアでもって種ごとに創造されているのである。異なる種のオスとメスが、勝手に「愛の門」を越えて交わることによって進化していく、というようなことはありえないのである。


*36 リチャード・ミコッド、池田清彦訳『なぜオスとメスがあるのか』新潮社、1997年、19
*37 西村尚子「アダムとイヴはどのようにして生まれたのか」、『日経サイエンス』20031月号、9496頁。

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 次回は、「愛の起源について」をお届けします。


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