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勝共思想入門 44

 アプリで読む光言社書籍シリーズとして「勝共思想入門」を毎週木曜日配信(予定)でお届けします。
 同書は、40日研修教材シリーズの一つとして、1990年に発行されました。(一部、編集部が加筆・修正)

光言社・刊

第十一章 搾取の本質(その二)

五 搾取論の誤り

 このマルクスの搾取(さくしゅ)理論で前提となり、公理となっていたのは、「労働力は特殊な商品である」ということでした。そして、労働価値説から導き出された、「価値は労働によって生み出され、それは一定の凝固した労働時間で表される」ということだったのです。

 しかし、商品価値は労働時間でその本質を表すことができず、その本質は人間の創造力によってつくり出される新しい有用性(人間に役立つ性質)であったのです。

 さらにマルクスは労働力が商品として扱われているというのですが、労働力を商品として見ることはできないのです。なぜなら商品としての本質的内容を備えてはいないからなのです。(このことは、すでに述べています)。

 労働力は商品ではないのです。そのように見えていても、そのように扱ってはならないものなのです。マルクス自身相当混乱しているように思えてなりません。

 マルクスの共産主義樹立の動機は、人間の疎外の克服をして人間らしい社会を現実することでした。しかし、資本論の展開において、それは資本主義においてはと、前置きしながらではありますが、すべての価値は労働力によって生み出され、それは量で測ることができ、労働時間で表せるといっています。かえって、人間性を無視、軽視する傾向へと陥ってしまっているのです。

 マルクスの考え方の前提に立てば、搾取理論は認めざるを得ません。しかし、その前提が間違っているのです。

 労働力は商品ではないのです。そして、その価値は労働時間で表すことができないのです。つまり、必要労働時間というものは実際はないということです。当然、剰余労働時間というものもなくなるのです。そして、剰余労働時間が搾取されるという搾取理論も成り立たなくなるのです。

六 搾取の本質

 それでは、今の資本主義の社会に搾取はないのでしょうか。マルクスの主張するような仕組みにおいてではありませんが、ないとはいえません。

 新しい価値、利潤の源泉は人間の創造力が生み出すものなのです。それゆえ、管理者も事務員も労働者も機械もそれぞれが創造力を発揮して生産する過程では、みな新しい価値、利潤の源泉をつくり出しているわけです。

 それゆえに、利潤はこれらの生産要素にそれぞれに見合う内容で分配されなければならないのです。分配するのに「不公正」があれば、搾取がなされることになるわけです。

 搾取のない社会の実現は、共産主義革命によるのではなく、倫理の確立が必要なのです。

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 次回は、「マルクスの根本矛盾とその克服」をお届けします。

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