総合相談室 Q&A 第9回
二世の非行をどう理解し、対応したらいいですか

回答:臨床心理士・大知 勇治

 この内容は、『TODAY'S WORLD JAPAN(トゥデイズ・ワールド ジャパン)』2013年2月号の「総合相談室Q&A」から抜粋したものです。「総合相談室Q&A」は、動画版(U-ONE TV/全16回)でもご覧いただくことができます。

Q4 非行少年の家族、親の養育態度の特徴をお話しください。

A4 簡単に言えば、過干渉、無関心、夫婦の不和です。
 過干渉というのは、細かく口を出し過ぎ、子供からうっとうしいと感じられる親です。この場合、子供は自分が信頼されていないと感じてしまいます。
 無関心というのは、子供を放っておいて、あまりかかわろうとしないタイプです。多くの場合、このタイプの親は子供の行動に責任を持とうとしません。子供の言うことをうのみにして、周囲を責めるような親もいますが、これは子供と向かい合うことから逃げている態度です。これも、無関心の一種と考えてもいいかもしれません。
 親が子供に関心がない態度を取ると、子供は愛されていないと感じてしまいます。過干渉と無関心は正反対のようですが、細かいことに口を出し、肝心なところで子供に向かい合っていないというように同時に出てくることもあります。あるいは、母親は過干渉で父親は無関心というように、両親が別のタイプであることもあります。
 先回、非行少年は仲間からの承認欲求が強く、その背景として家庭内で承認欲求が満たされていないことを説明しました。結局は、過干渉にしても、無関心にしても、子供たちにとっては信頼されている、認められていると感じられません。そうした寂しさや孤独感が非行の大きな要因となっているのです。
 最後に、夫婦の不和です。これは、子供の心に最も悪い影響を与えると考えていいと思います。両親のけんかは、子供にとっては、自分の右半身と左半身がけんかしているようなものです。そうした状態では、子供自身、大きな葛藤を抱えても無理はありません。ですから、「非行少年への対応は両親が仲良くすることが最も大切だ」と言う専門家も少なくありません。

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Q5 既に非行に走っている子供に対して、親は具体的にどのように対応していけばいいのでしょうか?

A5 まず、子供を変えようとするのではなく、家庭全体の立て直しが必要です。そのためには、心の風呂桶(おけ)理論でお話しした、“時間主管と空間主管、おいしい食事”を実践していくことから始めることです。それと同時に、夫婦が仲良くしていくことが大切です。夫婦それぞれが、自分自身のあり方を振り返り、相手のために生きるという信仰の基本を実践してください。相手を責めるのではなく、自分自身から変わっていくことです。
 その次に、子供の寂しさや承認欲求を満たしてあげられるよう、子供とのコミュニケーションを増やしていくことです。

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Q6 どのようにコミュニケーションを取っていけばいいのでしょうか?

A6 コミュニケーションは会話をすることだけではありません。会話をしても、お互いがイライラして口論になるだけですから、会話をしようとは思わないこと、そして、何も言わないことです。怒っても子供は悪いことをやめません。まずは、怒ることをやめましょう。怒りは破壊衝動ですから、何もいい結果は生みません。
 コミュニケーションというのは時間と空間を共有することです。最初は、親と一緒にいるのを嫌がると思います。特にお父さんとは一緒にいようとしないでしょう。ですから、一緒にいても嫌がられなくなることが第一です。そのためのポイントは、子供が好きなこと、関心を持っていることを一緒にすること、子供に喜んでもらえるようなことをすることです。
 子供が喜んで見ているテレビ番組を一緒に見る。子供がはまっているゲームを一緒にする。子供が好きな音楽を聴いてみる。こうしたことから始めてみるのです。
 「そんな番組はサタンだ」などと言わず、一緒に見てあげることです。あるいは、子供の友達と話をして、仲良くなってください。「そんな子とつきあうな」などと言えば、子供から嫌われるのです。子供の友達と仲良くなれば、自分の子供のことを理解できるようになり、子供の気持ちを、友達から聞くこともできるでしょう。
 そうして、子供の好きなことや友人を認めて受け入れてあげれば、子供は自分自身を認めて受け入れてもらったと感じるようになります。そうすれば、友達に依存することも、友達から承認欲求を持たされる必要もなくなり、自然と親の元に帰ってくるようになります。
 ですから、絶対に子供を裁かずに、子供の気持ちに寄り添って、子供を理解し、子供を喜ばせてあげること、そうすれば子供は親といることを嫌がらなくなり、一緒に同じ空間を過ごす時間が長くなってきます。

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Q7 家出をして帰ってこない子供とは時間や空間を共有すること自体が難しいと思いますが、その場合は、どうしたらいいのでしょうか?

A7 家に帰ってこなくても、やることは一緒です。なぜ家に帰ってこなくなるかと言えば、家の居心地が悪いからです。友人の家、彼氏、彼女の家より、自分の家の居心地が良くなれば、自然と家に帰ってくるようになります。
 ですから、家に帰ってこなくても、“時間主管と空間主管とおいしい食事、それに夫婦仲良く”を実践して、メールや電話でやり取りするときにも、裁かず、子供を喜ばせるようなメッセージを送るのです。そうすれば、親が変わったことを感じて、少しずつ家に近づいてくるようになります。(続く)

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 次回は、第10回「二世の障害をどう理解し、対応したらいいですか」をお届けします。