総合相談室 Q&A 第8回
二世の非行をどう理解し、対応したらいいですか

回答:臨床心理士・大知 勇治

 この内容は、『TODAY'S WORLD JAPAN(トゥデイズ・ワールド ジャパン)』2013年2月号の「総合相談室Q&A」から抜粋したものです。「総合相談室Q&A」は、動画版(U-ONE TV/全16回)でもご覧いただくことができます。

Q1 今回は非行についてお話しください。

A1 非行行為というのは、未成年者による法に触れる行為、もしくは、将来、法に触れるようなことをする可能性が高い行為のことを指します。一般的に多いのは、飲酒、喫煙、万引きや窃盗、深夜徘徊(はいかい)等です。ちなみに、少年と言いますが、この場合は法律用語として使用しており、少女も含みます。
 二世の場合に難しいのは、通常だと非行や犯罪とは言えないような行為も、信仰上の問題とされてしまう点です。例えば、成人になってからの飲酒・喫煙や未成年における性行為を伴わない男女交際などです。これらは、統一教会の信仰上では大きな問題ですが、社会的には問題になりません。一般の相談機関に行っても、問題視する保護者のほうに問題があるとされてしまいます。

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Q2 そうですね。信仰の問題とも絡んでくるので、保護者もついついきつい対応になってしまい、子供たちとの気持ちが離れていってしまうことが多いようです。

A2 二世に限らないことですが、非行行動をする子供たちには、いくつかの心理的な特徴があります。このシリーズの2回目に「心の風呂桶(おけ)理論」を紹介しましたが、単純に考えると、心の風呂桶のストレスがあふれたときに、ストレス反応で無気力傾向が強いお子さんは不登校・引きこもり系になり、イライラ傾向が強いお子さんは非行系になりやすいということです。
 つまり、非行に走る場合には、心理的には強い怒りを持っており、それが他者や社会に向いて反社会的行動になるということです。ですから、強い怒りを持っているというのが非行少年の心理的な特徴の一つです。この怒りのコントロールができないために、社会的に受け入れられない行動に走ってしまうということです。
 私の著書の『氏族伝道の心理学』には詳しく書きましたが、怒りの背景には、自尊感情の低さがあります。非行少年の心理的な特徴としても、この自尊感情の低さが挙げられます。また、将来の見通しを持てていないということも特徴として挙げられると思います。
 非行少年は、将来像、特に幸せな将来像を持つことができていません。むしろ、どうせ幸せになんかなれないと思っている場合が多いのです。このことが、刹那的になってしまい、非行行動に走らせる大きな要因になっていると思います。
 また、衝動性のコントロールの難しさというのも特徴的です。嫌なことも楽しいことも我慢できないのです。嫌なことを頑張って続けていくことができず、楽しそうなことがあると、そちらに引きずられてしまいます。
 さらに、仲間に依存する傾向が強いです。これは、家庭内で承認欲求が満たされていないため孤独感が強く、仲間からの承認を強く求める傾向があり、その結果として仲間と依存関係になって一緒に悪いことをしてしまうということです。
 以上をまとめると、怒りの感情の強さ、自尊感情の低さ、将来像のなさ、衝動性のコントロールの悪さ、仲間への依存の強さなどが、非行少年の心理的な特徴として挙げられます。こうした特徴は、もちろん二世でも同じだと考えていいでしょう。
 それと、規範意識ということについて、面白い調査があります。それは、非行少年とそうでない少年を比較した時、非行少年のほうが規範意識が高いという結果です。
 例えば、警視庁少年育成課少年相談室のアンケート調査(1999年東京都内)によれば、違法行為について「本人の自由」と答えた割合は、非行少年より一般中・高校生がほとんどの設問で高いのです。
 具体的には、凶器所持は本人の自由と答えた割合は非行少年19.2パーセントで一般少年23.8パーセント、テレクラ利用で本人の自由と答えた割合は非行少年40.6パーセントで一般49.7パーセント、援助交際では非行少年29.1パーセントで一般35.75パーセント、薬物利用では非行少年16.1パーセントで一般20.9パーセントとなっています。
 また、総務庁(当時)の「青少年の暴力観と非行に関する研究調査」(99年)では、調査を一般少年と鑑別所内の非行少年(暴力非行少年とその他の非行少年)とに分けて行っています。「親を殴りたいと思ったことがある」と答えたのは、一般高校生33.1パーセントに対し、暴力非行少年の男子は25.4パーセントでした。いじめについては、「自分がやられるかもしれないから知らんぷりしても仕方がない」と答えたのは、一般高校生では男子47.5パーセント、女子48.8パーセントであったのに対し、非行少年は男女ともに30パーセント前後という結果が出ています。
 このような結果から、非行少年は、規範意識が低くて非行に走るのではなく、矛盾しているようですが、むしろこうあらねばならないということにとらわれすぎて、身動きが取れなくなって非行に走ってしまうということなのでしょう。

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Q3 それは、親の養育態度に問題があるのでしょうか?

A3 心の風呂桶理論でお話ししたように、特別な原因があって非行に走るというよりは、長い間かかって溜(た)まってきたストレスがあふれた結果だと考えていただいていいでしょう。
 ですから、親が悪いから子供が非行に走ったというのは言い過ぎだと思います。ただ、現代型の非行の場合、非行少年の家族の在り方、もっと言えば親の養育態度に特徴があると言われています。(続く)

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 次回は、第9回「二世の非行をどう理解し、対応したらいいですか②」をお届けします。