総合相談室 Q&A 第7回
子供の不登校をどのように理解し、対応したらいいですか④

回答:臨床心理士・大知 勇治

 この内容は、『TODAY'S WORLD JAPAN(トゥデイズ・ワールド ジャパン)』2012年12月号の「総合相談室Q&A」から抜粋したものです。「総合相談室Q&A」は、動画版(U-ONE TV/全16回)でもご覧いただくことができます。

Q11 次に、第三期の回復期についてお話しください。

A11 回復期の特徴は、いろいろなことに対して関心を向け、実際に動けるようになってくることです。先生や友達と会えるようになったり、外出するようになったり、勉強するようになったり、学校のことが気になったりし始める状態です。
 この時期には、元気の回復に合わせて、外に出て行ったり、勉強を見てあげたり、友達と遊ぶように勧めてください。ただし、無理をさせないことです。最初は、親ができるだけ近くで見守ってあげることです。一緒に外出したり、勉強を見てあげたり、先生と一緒に会ったりするのです。
 この時期、最初にお勧めするのは家の手伝いです。一緒に掃除や料理、買い物などをするのです。手伝いをしてくれたら、家族みんなで褒めてあげましょう。家族の役に立って喜ばれるというのは、とてもうれしく、自信にもつながります。一緒に散歩をするのもいいでしょう。健康に良く、歩きながらいろいろな話ができるものです。
 元気は出ても、なかなか学校には気持ちが向かないという場合には、お稽古事なども良いと思います。昼間やっている主婦向けの料理教室や、囲碁、将棋、テニスクラブなど、本人が興味を持つことを体験させてあげてください。平日の学校がある時間でも、不登校であることを伝えれば喜んで受け入れてくれるところが多いものです。最近は、不登校に対する世間の理解も進んでいるので、積極的に上手に対応してくれるところが少なくありません。正直に今の状態を伝えて、どのように受け入れてもらえればスムーズにいきそうか、親と先方とが一緒に考えて、良い体験ができるように準備をしてあげてください。
 それとともに大切なことは、学校に向かうための準備です。この時期に入ると、学校や勉強のことが気になってきます。ただし、ここで無理をさせると、また第二期に戻ってしまいますから、慎重になってください。
 ここでのポイントは、親が学校や勉強のことを自分から言わないということです。子供が話題にしたらこたえてあげ、子供が勉強をしたいと言えば見てあげればいいでしょう。
 学校のことは、担任の先生や友人から伝えてもらうことです。もちろん、ようすを見ながら、負担にならないように注意する必要はあります。親が言うよりは先生や友人が言ってくれたほうが受け入れやすいものです。また、子供のようすを見ながら、もし学校の話をした後がつらそうであれば、そのことを先生や友人に伝えてあげてください。親が間に入って、強すぎず弱すぎず、適度な登校刺激を与えるように、上手に調整してあげてください。
 そのようにしていく中で、さらにエネルギーが溜た)まってくると、学校にようすを見に行くようになります。

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Q12 次に、第四期の様子見期ですね。

A12 この様子見期の特徴は、学校に行きながらようすを見るということです。もちろん、朝から行けるとは限りません。最初は放課後に行ってみたりします。そして、自分の机や棚などを見てみたりします。
 ですから、そろそろ学校に行きそうだと思ったら、あらかじめ担任に伝えて、机の中や棚をきれいにしてもらっておく必要があります。久しぶりに教室に行ったら、自分の机の中にゴミがいっぱい入っていて、それに傷ついて、またしばらく学校に行けなくなったという例もあります。
 そして、無理のない範囲で学校に行かせながら、少しずつ慣らしていってあげてください。最初は、保健室からでも、お昼前に帰ってきてもかまいません。やっと行けるようになったとき、少しでも長く行かせようと無理をすると、またエネルギーが落ち込んでしまいます。焦らずに時間をかけて、徐々に慣らしていくことが重要です。学校の先生とうまく連携を取りながら、少しずつ学校にいる時間を延ばしていきましょう。そうして学校に安定して行けるようになれば一安心です。

 不登校の場合には、今子供がどの時期にあるのかを見極めて、その時期に合わせた対応をしてあげることが重要です。
 最近は、相談室や適応指導教室、さらにボランティア学生による訪問ケアなど、自治体ごとにさまざまな不登校のための対応策を準備しています。各教育委員会の相談室などに行けば丁寧に教えてくれるので、ぜひ積極的に利用してみてください。また、中学校であれば、週に1~2回、スクールカウンセラーが行っているはずです。そうした専門家に相談してみるのも良いでしょう。

 また、これまでの話と矛盾するようですが、必ずしも登校の再開にこだわらないという姿勢も必要です。二世の場合には、学校の状況と信仰の内容があまりにも懸け離れていることがあります。特に高校生ぐらいになると、彼氏や彼女の話が多くなり、つきあっている人がいないと、わざわざ周囲が紹介してカップルにしようとすることも少なくありません。また、体育祭や学園祭の打ち上げの際に、お酒が出てくることもあります。
 学校よりも信仰のほうが大切であることは言うまでもありません。私自身、二世のための全日制教育機関である純世国際学院東京校を主宰していますが、通っていた高校の環境があまりにもひどいために、途中で転校をしてくる生徒も何人もいます。学校でのようすにいつも注意を払いながら、あまりにも環境に問題が大きいと感じられる場合には無理をさせず、信仰を第一にした選択をさせてあげてください。(続く)

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 次回は、第8回「二世の非行をどう理解し、対応したらいいですか」をお届けします。