2023.05.11 22:00
勝共思想入門 37
アプリで読む光言社書籍シリーズとして「勝共思想入門」を毎週木曜日配信(予定)でお届けします。
同書は、40日研修教材シリーズの一つとして、1990年に発行されました。(一部、編集部が加筆・修正)
光言社・刊
第十章 搾取の本質(その一)
三 搾取の仕組み
さて、その前に共産主義の、「搾取(さくしゅ)理論」について説明してみましょう。「剰余価値論」の説明です。剰余という言葉は「余り・残り」という意味です。そして、これが利潤となっていくというのです。剰余価値は利潤の要素となるのです。そして、この剰余価値は、すべての価値は労働が生み出す(生産する)という労働価値説の立場から、労働者の労働力が生み出したものであって、それ以外のいかなるものからも生み出されないというものです。
さて普通、「利潤」すなわち“もうけ”ということを考えたとき、次のように考えるのではないでしょうか。ある商品があり、それが100円の価値のものであった場合、利潤はそれを120円の価格で売ることによって得られるという考え方です。つまり20円のもうけというわけです。
しかし、マルクスはそれは根本的間違いを犯していると主張するのです。極く簡単に説明すれば、100円の価値のものを120円で売った人は、その時20円もうかったように思うけれど、120円で買った人の方は、20円を損していると言うわけです。両者を合わせれば、プラス、マイナスゼロになるというのです。簡単な表現を用いたのですが、実際はもっと複雑であるのは当然です。その時、得をしたように思えても、巡り巡って結局自分も損することになり、全く新しい価値は生み出されていない。つまり、新しい価値としての利潤は生産されていないというのです。
以上のことをまとめてマルクスは、利潤は「流通過程」で生ずるのではなく、「生産過程」で形成されるものであることを発見したと述べたのです。この点はマルクスが特に強調しているところなのです。「利潤は、それらの商品をその価値で、つまり、それらの商品に体現された労働量に比例して売ることによって得られるものである」(『資本論』)。100円の価値のものがあれば、それを100円で売ることによって既に利潤を得たことになるというのです。原料費・賃金などのコスト(必要経費)をすべて引いたものが80円だとすれば、20円が利潤となるわけですが、この20円分の価値はこの商品が生産されるとき含まれているので、100円の価値のものを100円で売ることによって利潤が得られるようになっているというのです。このことが、搾取理論の一番の根幹となっているところなのです。
それでは、どうしてこのような新しい価値、利潤の源になる価値がつくり出されるのでしょうか。マルクスによれば、あくまでも価値は労働によって生み出されるものであると見るのですから、もちろん労働者の労働と仕払われた賃金との間に、このからくりがあるということを論理的に説明していくのです。
マルクスにとって、ここでもう一つどうしても解決しておかなければならない問題がありました。それは、商品生産においてどうしても必要なものであり、ますますその重要度が大きくなっていく「機械」の問題でした。利潤は労働者だけが生み出すものだということを強調し、労働者の経済活動においての主人の立場を主張するためには、機械は新しい価値を生み出すことはないとしなければならなかったのです。
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次回は、「新しい言葉の惑わし」をお届けします。
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