2022.12.06 12:00
世界はどこに向かうのか
~情報分析者の視点~
「ゼロコロナ政策」に抗議する白紙運動(革命)
渡邊 芳雄(国際平和研究所所長)
今回は、11月28日から12月4日までを振り返ります。
この間、以下のような出来事がありました。
中国・上海で起きた「ゼロコロナ」政策に抗議する白紙運動が全土に急拡大(11月26日~)。中国との「黄金時代」終了と、スナク英首相(28日)。中国の江沢民・元国家主席が死去(30日)。米で黒人初の党トップが誕生、下院民主のジェフリーズ氏(30日)。韓国検察、文在寅(ムン・ジェイン)前政権の高官を逮捕、船員射殺事件で証拠隠滅の疑い(12月3日)、などです。
中国・上海中心部のウルムチ中路で11月26日、参加者がA4サイズの「白紙」を掲げて「習近平、退陣」と声を上げました。
白紙には「ゼロコロナ」政策や言論統制に対する無言の抵抗の意味が込められています。
27日、北京でも「ゼロコロナ」政策への抗議行動が起こり、成都、広州、武漢市などでも同様の動きが確認されています。
「白紙」運動は中国全土へと広がり、今後の動向が注目されています。
その背景となった出来事を挙げてみます。
まず共産党大会直前の10月13日、突如、彭載舟(ハンドルネーム=インターネット上で使う本名以外の名前)による「北京四通橋横断幕事件」が起きます。
横断幕には、「ゼロコロナは要らない、飯を食わせろ」「領袖(りょうしゅう)は要らない、選挙が必要だ」「国賊、習近平を罷免せよ」などと記されていたのです。
彭載舟は裁判にかけられ、死刑になるかと思われましたが、裁判所で審議する際、判事・検事らが、彭載舟の罪状として彼が「国賊、習近平を罷免せよ」と抗議したなどと言えるはずがありません。そのためか、彭載舟は精神病院送りになる可能性が高いといわれています。
この「事件」はSNSで拡散されました。そこに11月24日、新疆(シンチャン)ウイグル自治区ウルムチ市の高層マンション15階での火事という事件が重なりました。
火は17階まで昇り、煙は21階まで上がったのです。消防車がマンション付近までやってきましたが、当地では厳格な「ゼロコロナ政策」が実施されていたので、約2時間も消火活動が遅れたのです。そのため、10人が死亡、9人が負傷したと当局は公表しました。しかし病院の当直医師の話では、死者は44人もいたといわれています。
このウルムチ火災が契機になりました。南京市、上海市、北京市、広州市、武漢市などで、まず学生が抗議に立ち上がり、そこに市民が加わりました。
彼らは自由を奪われたことに抗議し、A4サイズの白紙を掲げて、抗議の意志を示したのです。警察当局は「白紙」を掲げただけの学生らを起訴するのは難しいのです。
各地の集会で、学生や市民が「共産党退陣」や「習近平退陣」を連呼するに至っていますが、おそらく1989年の「民主化運動」、天安門事件以来、このような共産党トップの辞任要求はなかったでしょう。
当局は抗議活動の呼びかけに使われている海外の交流サイト(SNS)の取り締まりに動いています。
今後、硬軟両様の構えで対応していくものと思われます。
広州市では12月1日までに封鎖措置が多くの地域で解除されました。
孫春蘭副首相(コロナ対策の責任者)は11月30日の会見で、オミクロン株の病原性の低さやワクチン接種が進んだことを挙げ、「わが国の防疫対策は新たな情勢、任務に直面している」と発言し、「ゼロコロナ」政策という言葉を使いませんでした。
治安当局は、抗議活動には厳しく臨む姿勢です。
米政府系のラジオ自由アジア(RFA)によれば、上海市などでは、警察が街頭や地下鉄で市民のスマートフォンを調べ、米ツイッターなど海外のSNSのアプリの有無を確認しているといいます。
中国でツイッターなどを使うには、「VPN(仮想私設網)」が必要になりますが、当局がVPNに関する規制強化に動く可能性があります。
今後の展開は全く読めません。全土を揺り動かし、中国の対外活動が活発化する契機となるかもしれません。
習政権は重大な局面に立たされています。
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