2022.11.29 12:00
世界はどこに向かうのか
~情報分析者の視点~
台湾地方選、与党敗北の影響
渡邊 芳雄(国際平和研究所所長)
今回は、11月21日から27日までを振り返ります。
この間、以下のような出来事がありました。
中国コロナ再拡大、北京、上海など各地で対策強化(22日)。露ミサイル攻撃、ウクライナ全土で停電(23日)。台湾統一地方選挙(26日)。蔡総統、民進党主席辞任を表明(26日)。バチカンが任命権巡り中国を非難(26日)。習氏退陣求める大規模デモ 上海(26日)、などです。
台湾統一地方選が11月26日、投開票されました。結果は、与党・民進党の大敗となりました。
地方選は、6の直轄市と15の県と市で行われましたが、全人口の7割が集中する「直轄市」と呼ぶ主要6市の市長選が特に重要となります。中でも首都機能を持つ台北市と、元々民進党が強い桃園市が注目されていました。
結果は以下のとおりです。
台北市は国民党(これまでは民進党)、新北市は国民党(国民党)、台中市は国民党(国民党)、台南市は民進党(民進党)、高雄市は民進党(民進党)、桃園市は国民党(民進党)となり、台北、桃園市ともに国民党候補者が勝利したのです。
直轄市以外の県市でも前回(2018年)同様、民進党は国民党を崩せませんでした。蔡英文総統・民進党は、中国への対抗を争点化して劣勢を巻き返そうとしましたが、奏功しませんでした。台湾全体の方向性を決める総統選と異なり、統一地方選で外交問題は票になりにくいのです。
今回の大敗で、次期総統選(2024年1月)を前に蔡英文総統の党内での求心力は低下するのではないかと見られています。
蔡氏は2018年の前回統一地方選でも大敗しています。しかし2020年1月の総統選で史上最高の約817万票を得票し、党内で絶大な力を誇ってきました。
今回の党公認候補者の選定に当たって、蔡氏は「党内の対立を避けるため」として、台北市や桃園市で慣例の予備選挙を行わず、自ら主導して各地の候補者を選んだのです。他の派閥からは不満の声が上がっていました。
自らが選んだ民進党候補が大量落選し、蔡氏が責任を回避するのは不可能となり、党主席辞任を表明せざるを得なかったのです。
野党・国民党が特に訴えたのは、蔡政権の新型コロナ対策のつまずきでした。ワクチン調達の遅れが目立ったのです。入境規制の緩和を進めた春以降は感染が急拡大し、足元では1日1万人から2万人の新規感染者が確認されています。
国民党にとっては、次期総統選に向けて大きな弾みとなりました。候補者の擁立で中心的な役割を果たした党主席の朱立倫氏が自ら総統候補になる可能性も高まっています。
懸念も浮上しています。
統一地方選とはいえ、蔡英文政権与党・民進党の敗北は、統一圧力を高める中国には屈しないと発信してきた台湾に対する米欧などの信頼に影響を及ぼしかねないのではというものです。
習近平政権は近年、蔡英文政権を「独立分子」と見なし、軍事的圧力を高めてきました。それだけに、今回の民進党の敗北によって、台湾の民意が「中国の圧力に屈した」との印象を国際社会に与えるのではないかとの懸念もあります。
国民党は親中派と見られてきました。長年中国との関係改善を主張してきているからです。少なくとも、2024年総統選と同時に実施される立法院(国会)選挙で多数派に返り咲けば、民進党が政権を維持しても「ねじれ」状態となり、現行の対中政策の継続は困難になる可能性も出てきています。
今後中国は、蔡政権の敗北の主因は対中政策の誤りにあると主張する宣伝工作に乗り出すでしょう。台湾産農産物の対中輸出規制の解除などをちらつかせつつ、民間交流などで国民党に対する一定の融和ムードも演出していくとの観測もあります。
しかし、民進党の敗北はアジア太平洋地域のパワーバランスに影響しかねないことから、共和党から下院議長が選出されれば、訪台に踏み切る可能性も取り沙汰されています。
結局は米国の動向が鍵を握るということになるでしょう。
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