2022.11.22 12:00
世界はどこに向かうのか
~情報分析者の視点~
北のICBM、日本のEEZ内に着弾
渡邊 芳雄(国際平和研究所所長)
今回は、11月14日から20日までを振り返ります。
この間、以下のような出来事がありました。
「ゼロコロナ」封鎖反対で抗議活動、中国・広州(15日)。ポーランドにミサイル着弾、2人死亡(15日)。トランプ氏 大統領選出馬を表明(15日)。米共和党が下院の多数派奪還(16日)。北の大陸間弾道ミサイル(ICBM)が日本の排他的経済水域(EEZ)内に着弾(18日)。米戦略爆撃機「B1B」、朝鮮半島上空に(19日)、などです。
日本の防衛省は11月18日、北朝鮮が同日午前10時14分ごろ平壌郊外から東方向にICBM1発を発射したと発表しました。
ロフテッド軌道(高度を上げて飛距離を抑える軌道)で、北海道渡島大島(おしまおおしま)の西約200キロメートル、日本のEEZ内に着弾しました。およそ69分間の飛行です。
発射されたミサイルは「火星17」との見方で、米本土を射程に収める能力を持っています。
発射場所は順安(スナン)付近、飛行距離約1000キロメートル、最高高度約6000キロメートルで米韓両国は2段目を切り離したことを確認しています。
浜田防衛相は同日、防衛省で記者団に対して「弾道重量などによっては約1万5000キロメートルを超える射程となり得る」との見方を示しています。
また、11月に入っての連続する2発の発射に伴って、新型弾の技術を着実に向上させたことを認めざるを得ないのです。米国への強烈なけん制であることは間違いありません。
北朝鮮のミサイル発射は巡航ミサイルを含め、今年34回、少なくとも計67発になりました。
これまでの年間最多が2019年の25発だったことから、今年の異常さや事態の深刻さが浮かび上がってきます。
ところで、ミサイル発射には膨大なコストがかかります。韓国国防省の傘下にある国防研究院は6月、米国の研究所の分析なども参考に北朝鮮のミサイル材料費を推計しています。
それによれば、ICBMは1発最大で3000万ドル(42億円ほど)、中距離弾(IRBM)は同1500万ドル、短距離弾は同500万ドルです。人件費などを加味した発射費用の総額が1~6月で最大6億5000万ドルになるといいます。同じ方法で11月上旬までの発射分を加えると優に10億ドルを超すのです。
昨年北朝鮮が国連に報告した内容によれば、2019年の国内総生産(GDP)は335億400万ドルです。
上記の計算を踏まえれば、発射経費はGDPの3%近くになりますが、「分不相応」と言わねばなりません。
一体どこから「資金」を集めてくるのでしょうか。北朝鮮は今、経済制裁下にあり資源や武器などの貿易は制限されているはずです。
コロナ禍の影響もあり中国との貿易も低調です。韓国銀行は2020~2021年の北朝鮮のGDP成長率はマイナスだと分析しています。
日米韓の北朝鮮担当の高官は10月、電話での協議で以下の内容を確認しました。北朝鮮はサイバー攻撃で暗号資産(仮想通過)を盗み取っている。違法な調達を防ぐため協力しなければならない、というのです。
今春、仮想通貨6億2000万ドル分の盗難事件が起きました。米連邦捜査局(FBI)は「北朝鮮系のハッカー集団『ラザルス』の犯行だ」と結論付けました。オンラインゲームへの攻撃で仮想通貨「イーサリアム」を摂取した事件です。
さらに国連の専門家パネルが2021年に公表した報告書では、北朝鮮がサイバー攻撃で盗んだ金額は2019~2020年に合計3億1640万ドルだとの分析結果も公表しています。合わせれば10億ドル程度になってしまいます。
今後対策が徹底されることになり、中長期的には北朝鮮は一層困難な事態に追い込まれることになるでしょう。
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