2018.06.23 22:00
総合相談室 Q&A 第4回
子供の不登校をどのように理解し、対応したらいいですか①
回答:臨床心理士・大知 勇治
この内容は、『TODAY'S WORLD JAPAN(トゥデイズ・ワールド ジャパン)』2012年7月号の「総合相談室Q&A」から抜粋したものです。「総合相談室Q&A」は、動画版(U-ONE TV/全16回)でもご覧いただくことができます。
Q1 今回は不登校について伺います。大知先生は、スクールカウンセラーとして公立中学校でも仕事をされているとうかがいました。
A1 日本でスクールカウンセラーの制度が始まったのは平成7年度からですが、私は平成8年度から公立の小・中学校のスクールカウンセラーをしてきました。
現在も公立中学校でスクールカウンセラーをしています。これまでに、何百人という不登校の子供たちと関わってきました。
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Q2 相談室にも二世の不登校に関する相談は多いのですが、そもそも、不登校とはどのような状態を言うのでしょうか? また、一度、不登校になった子供が学校に行けるようになるのでしょうか?
A2 まず不登校とは何かということですが、文部科学省は次のように定義しています。
「『不登校』とは、何らかの心理的、情緒的、身体的、あるいは社会的要因・背景により、児童生徒が登校しないあるいはしたくともできない状況にある(ただし、『病気』や『経済的な理由』による者を除く)ことをいう」
そして、文部科学省では、不登校で年間30日以上欠席している人を対象に、毎年統計を取っています。
平成22年度で、小学生で0.32パーセント、ほぼ310人に1人、中学校で2.74パーセント、ほぼ、37人に1人の割合です。少子化の影響で実数は減っていますが、割合的には10年以上、ほとんど変わっていません。ただ、教室に入れずに保健室や相談室にいる児童・生徒、あるいは適応指導教室などに通っている児童・生徒はこの数字の中に入っていませんから、教室に入れない児童・生徒の割合というのはこれよりもずっと高く、その割合は増えていると思います。
それと、学校に復帰できる割合ですが、小・中学校とも、その学年内に復帰できる生徒の割合は三割くらいです。七割の子供たちは次年度に持ち越されるということです。このように、不登校の場合、短期間で解決できないことも多いので、焦らずに長い目で見ながら取り組んでいくことが大切です。
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Q3 なるほど、深刻な問題ですね……。二世の不登校は一般と比べて割合が高いのでしょうか?
A3 そうした統計は見たことがないので何とも言えませんが、教会と学校は価値観が違う世界ですから、学校の居心地が悪く、行きたくないという二世が一般の子供たちよりも多くても、不思議ではないと思います。
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Q4 では、不登校の子供たちというのは、なぜ学校に行けなくなってしまうのでしょうか?
A4 これは、親御さんからよく受ける質問です。原因が分かれば、それを解決することによって学校に行けるようになるのではないかと考えるのですね。
しかし、ここで、前々回お話しした心の風呂桶(おけ)理論(本誌2012年天暦5月号114ページ)を思い出してください。詳しく知りたいかたは、「U-ONE TV」内の「総合相談室 Q&A 第3回 二世の心の問題にどう対処したらいいですか」の動画で見ることができます。
そこで説明しましたが、子供たちが学校に行けなくなる理由は、心の風呂桶からストレスがあふれ出たからです。
子供たちに聞けば、「友達とけんかをしたから」とか「先生が嫌いだから」など、さまざまな理由を言うことでしょう。
しかし、友達とのけんかは誰にでもあることですし、これまでもあったことだと思います。けんかをするたびに不登校になるわけではありません。
「先生が嫌いだから」も同じことですね。クラスの子供たちに人気がなく、嫌われている先生もいます。でも、そのクラスの大半の子供たちは、きちんと学校に行っているのです。
ですから、けんかや先生の問題は不登校になるきっかけにすぎず、本当の理由ではありません。ここのところをきちんと区別する必要があります。
不登校の解決に大切なことは、きっかけを解決することではなく、その子の心の風呂桶のストレスを減らしてあげることです。このことをくれぐれも忘れないでください。
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Q5 ところで、不登校には登校刺激はいけないと聞いたことがあるのですが、これはどうなのでしょうか?
A5 登校刺激をするというのは、「学校に行きなさい」と言ったり、学校の話をするなど、学校に関することを見せたり伝えたりすることですが、確かに一般的には、不登校に登校刺激は良くないと言います。
しかし、私は必ずしもそうではないと思います。登校刺激をしてはいけない場合と、適切な登校刺激が必要な場合があります。逆に言えば、子供の状態を見極めながら、ある時期には登校刺激が必要だということです。
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Q6 どのような場合は登校刺激はいけなくて、どのようなときはすべきなのでしょうか。
A6 不登校になってから学校復帰に至るまでには一連の流れがあります。第一期は「行きしぶり期」、第二期は「引きこもり期」、第三期は「回復期」、第四期は「様子見期」です。次回は、この内容について説明いたします。
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次回は、第5回「子供の不登校をどのように理解し、対応したらいいですか②」をお届けします。