2022.09.06 17:00
シリーズ・「宗教」を読み解く 232
キリスト教と日本⑪
確固たる信仰者としての自覚と誇りを示した少年たち
ナビゲーター:石丸 志信
日本26聖人殉教のあった1597年には、ザビエルによるキリスト教伝来からおよそ半世紀がたっている。その頃には全国でおよそ27万人の信者がいたといわれる。
いくら西洋から伝えられた新しい教えであったとしても、50年もたてば、親から子へ、子から孫へと信仰が継承されるに十分な年月である。
この頃には、一世代、二世代、三世代のキリスト教徒が家庭の信仰として培い、村落共同体の信仰、領民の信仰へと育てていったことだろう。
このような生活に根差した信仰共同体で育まれた人々は、自らのアイデンティティー形成の根幹にキリスト教が重要な役割を果たしていたに違いない。
26聖人の中にも親子で殉教した者がいる。親に強制されたわけでなく、自ら進んで殉教の道を歩んだ者たちばかりだ。
ミゲル小崎は伊勢出身の弓矢師。その子がトマス小崎。フロイスの『日本二十六聖人殉教記』によれば16歳であった。彼は長崎への道中、三原で母親に手紙を書いている。父親がそれを預かり懐に忍ばせていたところ、処刑後に発見された。
その手紙には、「神の御助けによってこの数行をしたためます。…私と父上ミゲルのことについては御安心下さいますように。天国で近いうちにお会いできると思います。神父達がいなくとも、もし臨終の時、犯した罪の深い痛悔があれば、また、もし主イエス・キリストから受けた数多くの御恵みを考えそれを認めれば救われます。現世ははかないものですから、パライソの永遠の幸せを失わぬように努めて下さいますように」 (『日本二十六聖人殉教記』 231~232ページ)とあり、母親を諭すような文面だ。さらに、弟たちの信仰も守ってくれるよう願っている。
最年少ルドビコ茨木は12歳。十字架上で喜びに満ち、「パライソ、パライソ、イエズス、マリア」と唱え、中国人を父に持つ13歳のアントニオも同じく十字架上で「イエズス、マリア」と繰り返し、習い覚えた詩篇第113篇「主をほめたたえよ。主のしもべたちよ、ほめたたえよ。主のみ名をほめたたえよ」(口語訳より)と息絶えるまで賛美し続けていたという。
こうした少年たちの姿には、確固たる信仰者としての自覚と誇りが見られる。
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