2022.04.27 17:00
中和新聞セレクト Vol.4
混迷する現代社会Ⅱ
毎週2回(火、金)、さまざまなコンテンツを配信している『中和新聞』。Blessed Life編集部が同記事のアーカイブスからおすすめのコンテンツをセレクトして皆さまに紹介します!
第4弾は「混迷する現代社会Ⅱ」(21世紀の家族を考える会)のシリーズを毎週水曜日(予定)にお届けします。
同コンテンツは『中和新聞』2020年5月から連載中のシリーズです。
第7回「選択的夫婦別姓」について考える(後編)
このシリーズでは、現代社会が抱えるさまざまな問題点を分析し、社会や家庭における正しい観点(価値観)や方向性を提示します。今回も前回に引き続き「選択的夫婦別姓」について考えます。(編集部)
2020年11月18日にNHKをはじめ多くのマスコミが報じた「選択的夫婦別姓」に関する調査結果を受け(その問題点は第5回参照)、野党の議員やリベラルな著名人などがツイッターで、選択的夫婦別姓を容認・推奨する投稿を行いました。
今回は、その中から次の2つの代表的な主張に対して反論を試みます。
●「世界で夫婦同姓を強制しているのは日本だけ。選択制なので不利益をこうむる人は誰もいない」宮本徹(日本共産党の衆議院議員)
●「同性婚と選択的夫婦別姓制度、誰も傷つけることなくただ幸せな人が増えるだけだから、とっとと可決してほしい」(リベラルなメディア「ハフポスト」日本版寄稿者)
■夫婦同姓が原則の国は世界で日本だけか?
共産党の宮本議員がツイート(投稿)したように、「世界で夫婦同姓を原則としているのは日本だけ」なのでしょうか?
まず、ドイツやオーストリア、スイスなどゲルマン系諸国では、“同姓が原則”であり、アジアでは、日本、タイ、インドなどがこれに属します。ドイツでは、1993年に民法を改正して夫婦別姓を容認しましたが、その基本的な考え方は、“同姓を原則”としながら、結婚後の姓について夫婦の合意ができない場合にのみ夫婦別姓を「例外」として認めるというものです。
ヨーロッパ諸国で言う「同姓制度」とは、法制度自体が、妻が夫の姓に改姓するという「父姓優先」であり(したがって、子供の姓も原則的に父の姓)、夫が妻の姓を名乗る制度はほとんどありません。
夫婦の姓に関して、全く自由な選択制を採用している代表的な国としては、スウェーデンが挙げられます(離婚率の高さや事実婚の多さ、青少年の犯罪率の高さなど、スウェーデンが抱える深刻な問題については、また改めてお伝えします)。
また、夫婦別姓でよく引き合いに出されるのが中国や韓国ですが、両国で夫婦の姓が異なるのは、儒教的な伝統に基づく、同姓同士の結婚を禁止してきた名残であると言われています。古くから中国や韓国では姓(氏)が「血族の標識」であるのに対し、日本では「家の標識」であるため、韓国では姓の数はわずか300弱と言われていますが、日本の姓は30万にも及びます。
このようなケースはあるものの、現在でも大半の国では同姓を“原則”とし、別姓は“例外扱い”であるだけでなく、先進国の中でも、法律に別姓の規定などない国も珍しくありません。
「世界で夫婦同姓を強制しているのは日本だけ」という主張がいかにミスリードであり、不勉強であるか明らかでしょう。
そもそも、世界各国では、それぞれ宗教的な伝統や歴史などその背景が違い、夫婦の姓に関しても、その国の歴史的な必然性があっての結果なので、「世界でこうだから」と言って一律に同様の制度を求めること自体、暴論だと言わざるをえないのです。
■夫婦別姓で幸せな人が増えるだけ?
リベラルな価値観を持つ人々にとっては、「選択的」夫婦別姓は「誰も傷つけることなくただ幸せな人が増えるだけだ」と感じるのでしょう。しかし、果たしてそうでしょうか? 親の「選択」によって家族がバラバラの姓となった子供たちは、それを「幸せだ」と感じるでしょうか?
同性婚も同様ですが、選択的夫婦別姓を推進する人々も、とにかく自分の「選択」が大事、自分の「選択」した人生が大事だというわけです。そのような人々にとって、子供の福祉など眼中にないか、二の次、三の次になっているのが実情です。自分の両親の姓のみならず、兄弟の姓も異なる家庭の子供たちがどう感じるのか、同姓の家庭の友達と比較してどう感じるのかなど、顧みることなどないのでしょう。
ここにも、「自分さえ良ければいい」といった利己的な価値観が見え隠れしています。欧米のような一神教の伝統を持たない日本において、神への畏れなき個人主義にはブレーキがなく、容易に極端な利己主義へと流れてしまいます。
利己的な人々による薄っぺらい主張に惑わされることなく、選択的夫婦別姓が日本社会にとって、子供たちにとって、真に幸せをもたらすものなのか、より慎重な議論が必要なことは言うまでもありません。
■夫婦・家族の絆を強める施策を
選択的夫婦別姓の法制化とは、日本の家族制度の根幹に関わる重大な問題です。
これまで3回にわたってその問題点を論じてきました。日本の家族のために政府がすべきことは、「選択的夫婦別姓」のような夫婦・家族の絆を弱める施策ではなく、強める施策でなければなりません。家族の再建は、現在の日本にとって喫緊の課題です。選択的夫婦別姓の法制化をはじめ、さまざまな政策が、家族(家庭)を擁護するものなのか、弱体化させるものなのか、見極める目をこれからも養っていきましょう。
次回のテーマは「同性愛」です。2021年3月に同性婚をめぐる札幌地裁判決が注目を集めました。判決文には「同性愛は精神疾患ではなく、自らの意思に基づいて選択・変更できないことは、現在は確立した知見」と明示されました。この点について検証します。
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次回は、「『人口減少問題』を考える」をお届けします。
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