2022.04.13 17:00
中和新聞セレクト Vol.4
混迷する現代社会Ⅱ
毎週2回(火、金)、さまざまなコンテンツを配信している『中和新聞』。Blessed Life編集部が同記事のアーカイブスからおすすめのコンテンツをセレクトして皆さまに紹介します!
第4弾は「混迷する現代社会Ⅱ」(21世紀の家族を考える会)のシリーズを毎週水曜日(予定)にお届けします。
同コンテンツは『中和新聞』2020年5月から連載中のシリーズです。
第5回「選択的夫婦別姓」について考える(前編)
本シリーズでは、現代社会が抱えるさまざまな問題点を分析し、社会や家庭における正しい観点(価値観)や方向性を提示します。今回は、改めて注目を集めている「選択的夫婦別姓」について考えます。(編集部)
■選択的夫婦別姓「賛成」が7割?
2020年11月18日、NHKをはじめ多くのマスコミが、「選択的夫婦別姓」に関する意識調査の結果を報道し、「選択的夫婦別姓『賛成』が7割を超える」という結果に大きな注目が集まりました。12月には、選択的夫婦別姓制度の導入にも影響を与える、第5次「男女共同参画基本計画」が閣議決定されることになっていたため、そのタイミングに狙いを定めた意識調査だったと言えるでしょう。この調査を行ったのは推進派の市民団体であり、合同で調査を行った早稲田大学法学部の研究室も推進派の教授のもとにあることから、その意図は明らかです。
さらにこの調査には大きな問題がありました。それは、選択肢に「旧姓の通称使用」が言及されていなかったのです。この調査で選択的夫婦別姓「賛成」は、「『自分は夫婦別姓が選べるとよい。他の夫婦は同姓でも別姓でも構わない』と『自分は夫婦同姓がよい。他の夫婦は同姓でも別姓でも構わない』の2つの選択肢を合計した人数」となっています。実はここに「賛成」した人数(割合)が増えるカラクリがあります。その点を明らかにするために、内閣府が2017年に実施した同様の世論調査を確認してみましょう。
こちらの調査では、「夫婦は必ず、同じ名字(姓)を名乗るべきであり、法律を改める必要はない」と「法律を改めてもかまわない」(=夫婦別姓を容認)に加えて、「夫婦は必ず同じ名字(姓)を名乗るべきだが、婚姻前の氏を通称として使えるように法律を改めることはかまわない」という「旧姓の通称使用」を含む選択肢がありました。結果は、「法律を改めてもかまわない」を除く2つの選択肢を合わせた夫婦同姓「賛成」が、53.7%と半数を上回っています。内閣府の同様の調査で、1996年に夫婦同姓「賛成」が62.3%と6割を超え、それ以降も、5割を下回ったことはありませんでした。
推進派による「選択的夫婦別姓『賛成』が7割を超える」という調査結果が、いかに“演出された”ものだったか理解できるでしょう。
■旧姓の通称使用が現実的な解決策
夫婦別姓の主張は、法務省が指摘しているように「女性の社会進出等に伴い、改氏(姓)による社会的な不便・不利益を指摘されてきたことなどを背景に、選択的夫婦別氏(姓)制度の導入を求める意見」としてかねてよりありました。しかし現在では、職場などでの旧姓の通称使用が一般化しているほか、住民票やマイナンバーカード、運転免許証、パスポートなどで旧姓の併記が可能となっています。
よって、現実的に法律を改める(民法を改正する)必要はなく、「社会的な不便・不利益」は旧姓の通称使用である程度緩和されうると言えるでしょう。それでもなお、推進派は「選択的」であることを強調し、夫婦別姓の制度化(民法改正)に情熱を燃やしているのです。
■選択的夫婦別姓「さらなる検討を進める」
2020年12月25日に「男女共同参画基本計画」が閣議決定されました。当初の案には、選択的夫婦別姓について「必要な対応を進める」という前向きな文言でしたが、結果的に、「さらなる検討を進める」という表現に落ち着きました。自民党内からの反対や慎重な意見が影響を与えたと見られます。「基本計画」は2021年度から5年間実施されるため、2025年度までは選択的夫婦別姓制度が導入されることはなく、「先送り」になったと言えます。推進派は5年後に向けて、さまざまな働きかけを継続していくことが予想されます。
■選択的夫婦別姓の問題点
そもそも、「姓」(※民法等の法律では「氏」と呼ぶ)とは、単なる個人を表すものではなく、家族を表すもの、「ファミリー・ネーム」です。
1996年に法務省民事局参事官として選択的夫婦別姓の法制審議会に関わった小池信行氏(推進派)が、「選択的夫婦別姓制を採用した場合、別氏(姓)夫婦については、氏は個人の徴表に純化します。そうなると、全家族に共通する制度としての家族氏(ファミリー・ネーム)というものは消滅するということになる」と認めています。
このように、たとえ「選択的」であったとしても、制度として別姓を認めてしまうと、「氏名」の法的な性格が根本的に変わってしまう、私たち国民全体に関わる“革命的”な変革となってしまうのです。
また、家族の呼称が廃止された場合、実際にさまざまな問題が生じることが予想されます。夫婦の間に生まれてきた子供たちの姓をどうするのか、いつ決めるのか、子供自身に選ばせるのか、子供が複数生まれた場合はどうするのか……。さらに、もともと同姓の夫婦は別姓に変更できるのかなど、混乱は必至でしょう。
例えば、ある家族において、父親の姓が「田中」、母親の姓が「佐藤」、息子の姓が「佐藤」、娘の姓が「田中」といったことも起こりうるでしょう。このように、一つ屋根の下で暮らす家族の姓(名字)がバラバラになることで“家族の絆”がさらに強まることなどありえないでしょう。たとえ「選択的」夫婦別姓といえども、その影響、しわ寄せは日本全体の家族に及ぶことになるのです。
次回、選択的夫婦別姓推進派や容認派の主張から、その問題点をさらに掘り下げて考えていきます。
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次回は、「『選択的夫婦別姓』について考える(中編)」をお届けします。
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