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宣教師ザビエルの夢 64

 アプリで読む光言社書籍シリーズとして「宣教師ザビエルの夢」を毎週月曜日配信(予定)でお届けします。
 1549年8月15日、鹿児島に一人の男が上陸した。家族や故郷を捨て、海を渡った男が、日本で夢見たものは何か。現代日本に対する彼のメッセージを著者が代弁する!(一部、編集部が加筆・修正)

白石喜宣・著

(光言社・刊『宣教師ザビエルの夢-ユダヤ・キリスト教の伝統と日本-』〈1999429日初版発行〉より)

第五章 律法の精神と現代日本への教訓

三、「盗んではならない」

隣人愛のはかり
 阪神大震災が起こったとき、全国からたくさんのボランティアが駆けつけ、救援活動に奔走する姿を見ました。また、近隣住民の助け合う姿も多く見られました。混乱した状況にありながら、略奪が一切起こらず、人々の冷静な対応が、かえって諸外国に感銘を与えた、という記事も目にしました。そんなエピソードの中に、日本人の心の温かさやモラルの高さを見つめながら、この国もまんざら捨てたものではないな、という気持ちを抱かせました。

 しかし、あれから数年の歳月が流れ、人々の心はどれほど豊かになったでしょうか。近隣の住民のきずなは、どれくらい強まったのでしょうか。ふと、不安になることがあります。

 律法によれば、「殺すな、姦淫(かんいん)するな、盗むな、むさぼるな」、これらは隣人愛の教えです。イエス・キリストの教えを世界に拡げることに貢献した、ユダヤ人出身の使徒パウロは、「愛は隣人に悪を行いません。だから、愛は律法を全うするものです」(『新約聖書』ローマの信徒への手紙1310)と言っています。それを読み替えれば、隣人を愛するということは、人を殺したり、姦淫したり、盗んだり、むさぼったりしない、ということになります。言ってみれば、「殺人、不倫、盗難、貪欲」が少ないほど、世の中が隣人愛に満ちているということです。

 ではあの出来事以降、この国の状態はどうでしょうか。どうも不可解で、凶悪な殺人事件を耳にすることが多くなりました。昨年(1998年)は不倫ブームや「援助交際」とやらで、性の倫理は怪しくなっています。また近ごろは、コンビニ強盗や現金輸送車をねらった強奪事件もよく耳にします。盗みも簡単便利にできるようになったのでしょうか。グルメブームは下火になっても、食べ放題の店は人気を呼んでいるし、人々の食欲は衰えを見せません。異常なまでの金に対する執着が、陰惨な事件を生み出していることだってあるでしょう。

 このような世の中を見ていると、隣人愛の拡がりどころか、人に対する悪が横行しているように見えます。そんな中で「盗むな」と叫んでも、かえってむなしい響きを残すばかりです。

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 次回は、「神への愛を表す教え」をお届けします。


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