家族の絆づくり 139
望んでいることと実際に行動していることが異なる

ナビゲーター:阿部 美樹

「安心・安全」を求める特徴
 人は誰もが「望んでいることを実現するために行動している」と思いがちですが、現実はそうではないことが多くあります。
 「望んでいることと実際に行動していることが異なる」場合があるということです。

 何か苦手なことがある場合、頭では解決したいと望んでいても、心の底では苦手なことを避けようとします。相反する二つの思いがぶつかり合い、それが葛藤になって問題の解決をさらに難しくしています。
 これは、「安心・安全」を求めて「苦痛や嫌悪」を避ける脳の特徴が影響するからです。

 例えば、大きな犬に吠えられて恐怖を感じた場合、犬の大きさに関係なく、犬を見ると避けるという反応を身に付ける場合があります。

 人間関係でも同じことが言えます。
 夫婦の意見が食い違った時、夫から激しく怒鳴られて恐怖を感じた経験があると、何でも話をして分かり合いたいと望む半面、安心・安全を求めて、夫を怒らせないことだけに気を使ってストレスになることがあります。

 「望みの実現」よりも「苦痛を避ける」ことが優先するという特徴を知り、苦痛を避けても望みは実現しないことを自覚することが必要です。

 問題を解決するためには「自分が何を望んでいるかを正確に知ること」です。
 目先の苦痛よりも、自分自身を深く見つめて、本来の自分の望みに気付くことが必要です。
 無意識の潜在意識のレベルの情報を、意識という顕在意識のレベルで理解することこそ、「気付き」です。

「悩み」よりも「望み」に焦点を合わせる!
 それでは、望みを実現するためにはどうしたらよいでしょうか。
 「悩みは何か」よりも「望みは何か」ということに焦点を合わせることが大切です。

 悩みとは「不安解消」を求め、望みとは「喜び体験」を求めます。
 脳の特徴に「安心・安全」を求めると表現しましたが、これは言い換えれば「脳には快楽と喜びを求める特徴がある」ということです。

 快楽につながる思考や行動をするときには、脳は最大限に働きます。望みが実現された時ほど「喜びや平安、心地よさ」を感じることはないでしょう。
 喜びをイメージすることによって、自然と行動したくなります。また、望みが何かが明確になった後は、現実の不安にも改めて目を向けてみましょう。

 悩みは人生に支障を及ぼす壁のように感じることがありますが、よく観察してみると「望み実現のための踏み台」になる要因でもあるはずです。
 悩みを無くそうというよりも、悩みにも「肯定的な意図」「肯定的な価値」があると思って見つめ直してみましょう。
 新たな発見と気付きがあるはずです。