愛の知恵袋 139
愛と知恵で乗り越えよう

(APTF『真の家庭』260号[2020年6月]より)

松本 雄司(家庭問題トータルカウンセラー)

コロナ禍に翻弄される国、社会、家族

 今、新型コロナウイルスが世界で猛威を振るっています。この地球規模の災厄は、世界の国々が国家エゴを越えて人類愛で一致協力し、国内では国民が身勝手な行動を慎んで一致団結してこそ克服可能です。人類の英知と行動にかかっており、私たちの良識と成熟度が問われます。

 日本でも緊急事態宣言が発出中ですが、解除されたとしても感染の再爆発を防ぐために、しばらくは自粛行動を続けなければならないと言われていますから、長い闘いになりそうです。会社の倒産や解雇による失業、自営業者の休業・減収など、家計を支える者には深刻な不安があり、そのストレスで家族間の口論や暴力事件まで起きているのは胸の痛い話です。母親たちにとっても、休校・休園で子供たちを家で全面的に抱えこまなければならなくなると大変です。夫婦でも終日顔を突き合わせているとストレスになることがありますが、子供たちもずっと狭い家の中に閉じこめられているとストレスが溜まります。こういう時、どうすればよいのか、誰もが困っているところですが、今回は我が家の実情を話してみます。

孫は本当にカワイイ…だが、疲れる

 わが家では国際結婚した娘が2月初めから5歳と18か月の男の子を連れて帰省していました。家は自宅兼事務所になっていますが、来訪者を迎える部屋は二人の遊び場になりました。あっという間に足の踏み場もない状態になり、ママが片づけても片づけても無駄な抵抗。まるでゴミ屋敷のようです。来客時には半日がかりで片づけなければなりません。最初は遠慮がちだった孫たちも、慣れてくると私の寝室や仕事部屋の書斎にも侵入。ミステリー現象が始まる…。時計が止まる、スリッパが消える、機械が故障、あらゆる物が移動…。

 2月は仕事が忙しく、じっくり孫の世話をする余裕もなく、仕事の合間に遊んだり、買い物や近くの公園に連れて行ったり、同じ年ごろの子を持つ友人の家に送迎したりすることで精いっぱいでした。それでも、1か月も経てばジイジはヘトヘト。「もう少しで解放される」と思いきや、2月末になると帰国先でコロナ感染が急拡大。「今は日本にいたほうが良い」ということになり、娘は意味ありげににっこり笑って、「ということで、もう1か月、よろしく!」。

 3月にはコロナ対策がさらに強まり、「極力、家の中にいるように」という雰囲気になって来た。そこで、テレビの子供番組も活用。チビっ子たちは「キラメイジャー」のファンになり、その主題歌や「パプリカ」を大声で熱唱します。

 さらに、私のタブレットも動員され、子供向けの動画を見せるのに活躍。「トムとジェリー」にも「はたらく車」にも数々の恐竜君たちにもずいぶん奮闘してもらいました。しかし、いかんせん男児二人、それも活発な行動習慣の国で育っているので、その好奇心と行動欲求は到底満たせません。姉やいとこの家に連れて行ったり、アフリカンサファリに行ってストレス解消です。そうして3月の終わりには帰国する…はずでしたが、その時には、日本も相手国も入国者受け入れ制限。飛行機便も運休…。「ということで、もう1か月、よろしく!」とまた娘が笑う。

夫婦で、親子で、絆を深める時間を持とう

 4月になると緊急事態宣言が出て、企業も団体も活動自粛。私の仕事も休業状態になりました。事ここに至っては腹を括(くく)るしかない。「今は、日ごろできなかったことをやれる時だ」と発想を転換しました。たまっていた用事を順次片付けながら、特に、子や孫たちとしっかり向き合って、彼らを愛し、良き思い出をつくってやりたいと思いました。

 この期間は、第一に、出来る限り家で過ごせるように工夫をこらすこと。そのうえで10日に1回くらいは人出の少ない野外に連れて行こう…ということにしました。そこでまず、カーネーションやサルビアなどの花と、なすび・レタス・ミニトマトなど野菜の苗を買って来てベランダの鉢に植え、子どもたちが毎日水やりを楽しめるようにしました。

 あとは10日に1度の野外活動。まず最初は近郊の自然公園へ。川辺の野原で昆虫採集です。孫たちのために大小2本の手製の網を作りました。台所の水切りネットの口周りを針金で縫うように通して丸い輪にして、それを園芸用の緑の棒の先に固定すれば、即席の虫取り網完成です。草むらの菜の花の周りにチョウチョが飛んでくるのでそれを追いかけます。そんな網でもジイジは10匹、孫は5匹を捕まえることができ、虫かごはいっぱいに。その合間に川に釣り糸を垂れて12センチほどのハヤを1尾釣り、持ち帰ってベランダで飼い、孫とエサやりをしています。

 そして、2回目は、大潮の日に合わせて人出の少ない海岸に潮干狩りに行きました。浜辺での貝殻拾い。お弁当の後、孫たちは磯でヤドカリや子ガニに夢中。その間に私は稼ぎ役を命じられ、せっせと貝掘り。何とか両手にひとすくいほどのアサリが採れ、翌日はおいしい貝汁でした。よくよく考えてみれば、親・子・孫でそろってこんな時間を持てるのは、今後、あるかどうかわかりません。とかく暗くなりがちなこんな時勢だからこそ、夫婦で水入らずの対話を深めたり、親子で心に残る思い出をつくってはどうでしょうか。

オリジナルサイトで読む